『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

第20回夏季研滋賀大会(中編)、実技決定と事務処理について

 第20回漢方鍼医会夏季学術研修会滋賀大会の中編となります。参考記事へのリンクは前編に張ってありますので、参照しながら閲覧していただけると幸いです。我ながら6年前のことを忘れているのであり、その時からどれだけ進化できたのか?あるいは足踏みをしていなかったかなど、思わず読み込んでしまっていました。

 さて前編では、今回の実技プログラム構築で実行委員会が小さなきっかけからノーベル賞ものの大発見をしたのではないかと、たった一年の準備期間では分かっている人だけが乗り込める小さな船にしか過ぎないところへ大勢を乗り込ませようとしたような、今から思い返せば客観的には鰯やあじが鯨や鮫に食いついていこうとしているような状況だったところまで書きました。
 話が全く飛んでしまいますけど、オーストラリアで2.7mもあるホオジロザメに観察用タグを付けて整体調査をしていたところ、なんとこのホオジロザメが食べられてしまいタグだけが海岸に漂着したという事件があったそうです。鮫が共食いをするのは以前から知られていたことなのだそうですが、逃げられないように400mの深さまで引きづり混まれて4mのより大きな鮫に飲み込まれていたそうです。我々人間からすれば2.7mのホオジロザメなら無敵だろうと思っていたのですが、そんなに甘くないようですね。逆に言えば鰯や鰺がどうして絶滅しないのか、地道な努力の方がもっと大切だということがいいたいのでした。どんな皮肉が込められているのか、まぁ想像してみてください。

 話を戻しまして、5月の第一階講師合宿では厳しい評価と意見の相違を「たたきつけられた」という感じで、これは素直に実行委員会の取り組みを反省し、修正に応じることになりました。決して「このままでは夏季研を中止せざるを得なくなるから」との危機感から信念をねじ曲げたのではなく、やってはいけないと分かっていつつ色々と盛り込みすぎて混乱状態になっているのでシンプルな状態に戻せば我々の伝えたいことは分かってもらえるだろう、宿題とすべきものは宿題にしようという割り切りからです。決して講師陣の先生方をだましたのではないこと、この後に書かれていますからご安心を。
 それで次の日曜日の滋賀漢方鍼医会の月例会で、一度のレクチャーで誰もが確実に再現できる実験のみ取り入れるという方針で検証を厳しい基準で行ったところ、「気の抜けた脉(開いた脉」の作成実験と臨床的自然体は取り入れられるだろうということになりました。この二つがあれば姿勢に関することで脉状変化がリアルタイムに伝えられるのであり、肩上部と腹部も同時に観察することで良い脉状の判断基準が明瞭になって来るという最初の目的は達成できると、今度こそ手応えがありました。
 6月の本部会終了後に理事会を早めに切り上げてもらい他の講師陣にも集まってもらって、「気の抜けた脉」の作成実験と臨床的自然体についてのレクチャーを行いました。この二つであれば再現性が確保されており実技の中へ取り入れて大丈夫という了解を得ることができました。
 次の週の滋賀漢方鍼医会では最後のブラッシュアップということで、講師合宿での実技の伝え方の工夫を議論し、実際にやっていました。今後の課題になってくるのですけど、視覚障害者の先生と晴眼者の先生では取り組みの入り口が根本的に異なっているところがあり、今回は視覚障害者だけを集めた班編成をすることで臨床的自然体を一度でマスターしてもらうことにしました。
 7月の第二回講師合宿では、これで問題が起こるはずがないと分かっていても実は緊張をしていました。最初からこのプログラムで二回分の合宿があれば菽法脉診での指の重さはほとんど統一できたでしょうし、臨床的自然体も地方組織までしっかり定着できるレベルに浸透できたのが今となっては惜しいです。自然体(基本的自然体)はテキストに掲載されているのに普段の月例会で復讐をしていないというところがほとんどらしいですから、うまく軌道に乗せられる発表を本部でやらなければならないのでしょうね。

 さて、これで実技プログラムの準備はできました。けれど事務局の運営がこれまた大変でした。特に困ったのがキャンセルの多さで、仕方のない事情ばかりですが収入が目の前で落ちていって収支が赤字になってしまうことが明白になってくる状況は、本当に泣きそうになりましたね。
 参加費が値下げになっているところへ消費税の増税に合宿費用の増大(これは二時会の負担をしないとかツインルームを埋めきるなどで逆に軽減させています)、滋賀からでてもらう講師の交通費を最初から出張費扱いにしておいた大盤振る舞い(障害者割引を活用すれば二万円程度軽減できたのですが)、と要録印刷費の見積もり違いから、小額ながらも今回は赤字運営になってしまいました。前回が大幅な黒字だったので別会計にしておいた準備金が潤沢にありますから滋賀漢方鍼医会本体への影響はないということで、次の担当の時にはこれを埋め合わせるという約束を残して、運営はそのまま続行することにしました。追記:大会終了後の理事会報告で、赤字の場合には本部から補填をするという取り決めが初めからあり、その他の地方組織からも安心して今後の担当をするためにも悪しき前例にしないで欲しいという意見から、ありがたく補填を受けさせてもらうことにしました。
 それでも軽減できる箇所は最初からシビアに削り混んでいたのであり、実技会場も三つ押さえておいたものを一つ返却していますしマイクも一日だけ借りるようにしていたとか、二年前に申し込んでおいたのでグランドピアノの使用料を半額にしてもらっていますし、ホテル担当者が顔をしかめても最後の最後まで削り混んでおきました。合宿に関しても相部屋の調整をかなりやりましたし、直前キャンセルも困難な交渉をしながらほとんどを返却してもらえたりしています。点字資料についても「今回までですよ」ということで、割引料金でやってもらえました。
 特にプレゼンテーションをするためのプロジェクターの導入に関しては個人の所有物を持ち込むことでスクリーン代のみに押さえることができ、大幅な経費削減になりました。ちなみにプロジェクターのレンタル費用はどこでも相当な割高料金になっており、本部でも取穴実技で毎回レンタルするのはもったいないということで購入しているようですから、次からはこれを借りてくれば宅急便代だけで済ませられます。
 それから名札作成のためにラベルライターを使っていたのですけど、点字の打刻ができる機種でやっていたなら途中で破損をしてしまいました。途方に暮れてしまい、宛名ラベルの小さな印刷物に変更することも考えたのですけど、幸いなことに滋賀漢方鍼医会の会員の中に同じ機種を所有している人がいて借りることができましたから、事なきを得ました。アクロバットみたいな解決でしたね。これもちなみに個人の所有物なので個人で当然負担したのですけど、修理代が安くて済みましたから、ラッキーでした。

 文字数が多くなりすぎてきたので、大会当日のことは後編に続きますが、またまた敢えて準備段階での反省点をまとめてみました。
 まずはやっぱり、「何がやりたいのか」を最初に明確にして「それには何が必要か」を先に決めてから準備を開始すべきだったということです。「そのためには何をやらなければならないのか」は、必然と分かってきます。前会ではソフトウェアは二年前からの計画通りに進めて一年前ではほぼ形になっており、ハードウェアの準備にその後の半年を忙殺されたという形でしたけど、今回はそれがまるっきり逆になってしまいました。
 夏季学術研修会なのですからメインは研修をすること、即ち実技であり一年くらい前より本部で折に触れては流布していく必要がありました。それが3月での趣旨説明でいきなりでてきたものですから、逆の印象を与えてしまい参加者数が伸びなかった一員になってしまったかも知れません。またパネルディスカッションについても出演者は半年前ではなく十ヶ月くらい前には決定しておくべきであり、グループディスカッションの時間があるので盛り上がりますけど本当に生かし切れたかはちょっと疑問が残りました。
 実行委員長は最後までよく頑張り、その他の委員についても本当にみんな頑張ってくれました。でも、実行委員の中に会長と副会長のどちらもが入っていたことがよかったのかという疑問が、今からではあります。内部からの歯止めがあっても良かったのかも知れません。
 最初の計画では段階的に人数を増やしていくということだったのですけど、おめでたも含めて滋賀漢方鍼医会を離れる委員がでたので事務局員を補充するだけにとどまり、他の会員との情報共有という点でも落ち度があったのではないかとも思えます。ここは会員の頑張りで直前に伝えた役割分担を本当に良くこなしてくれて、懇親会の盛り上げなどホスト役として必至に頑張ってもらえましたから、「お・も・て・な・し」の心がでていた大会になったのではないかと感謝しています。
 私個人ですけど、まずはハードウェアには前回の実績があるので余裕を持ちすぎており、資金計画が最後に狂ってしまった責任を感じています。また「胃の気脉」についても、一つの例示であることをあの時に釘を刺しておけばという後悔がありますけど、今は実行委員会の中で追求をして本当に勉強になったことが多く、取り組み自体は間違っていなかったと思います。かなり長い宿題になるでしょう。それに長く本部に通っていて、アプローチの仕方が地方組織ごとに異なっていることは十分に承知していたのですが滋賀の取り組みだけが蔑視されているような感じになっていることを突きつけられたことは教訓であり、次の担当ではこの点を最初から考慮して準備すべきだと思いました。

 それでは、後編は楽しく無事に大会が振興した報告にしていきます。