『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

見学を受け入れて感じたこと

 今日は午前中に見学者がありました。「にき鍼灸院」の見学システムは自負すべき独特のシステムなのですがこれは機会を別にするとして、少し思うところがありましたので書いてみます。

 昨年だったか、伝統鍼灸学会の役員会から報告を聞いて愕然としたことがあります。
 卒業生に治療室見学受け入れを頼むと喜んで受けてくれるものの、その後に間違いなくと言っていいほど鍼灸学校へ苦情が持ち込まれるとのことです。「最近の学生は挨拶の仕方も知らないのか!」と、鍼灸の本番に入る前で苦情となるそうですから呆れたものです。
 学校側も玄関で追い返されたのでは今度は学生からの苦情となるので、挨拶の練習をさせていると聞きますからこれは鍼灸学校ではもうありませんね。

 私の学生時代を思い出してみると確かに挨拶の練習をさせられた記憶はあるのですけど、これは視覚障害者ではあるが社会人として羽ばたこうとしている決意をしっかり述べるようにと、教員という「人間」から生徒という「人間」への教育でした。
 もちろん「玄関を入ったならおはようといいなさい」などと、小学生のような挨拶の練習はありませんでしたよ。
 治療室へ入ったなら手を洗いたいので水道を貸してもらえるように頼んで、手は必ず持参したタオルで拭くようにというような、人間として・治療家としての誠実さをアピールし気持ちよく見学させてもらうためのポイントを教えてもらっていたということです。

 ですから、鍼灸学校もこのようなアドバイスなしに送り出しているようなので一方的に現代の学生を責めるばかりも可哀想な点はあるのですけど、それでも玄関先での挨拶は鍼灸学校の責任にはならないでしょう。
 そうそう書いていて思い出したのですが、助手に入れて欲しいと電話をしてきたのに見学時には勝手に治療室の洗面器の消毒薬に手を突っ込むだけでなくタオルも治療室のものを無断で使ったやつですから、即座に却下したことがありましたねぇ。
 ちなみにですが、最初は助手で入ってきて後に私の奥さんになっている人ですけど見学時には社会人的にも鍼灸師としても態度は一流でした。また伸びている人は、第一印象からとてもいいものです。

 本日の見学者は十年近く前に卒業をして病院勤務をしていたのですが、事情から故郷に帰って現在は家族を養うために訪問マッサージがメインとなっている人ですけど、勤務時代までは関心のなかった接触鍼についてたまたま講習会に参加してその効果に魅了されてしまったとのことです。
 私のところへはホームページに掲載されている資料を読んで鍼灸の可能性の夢が広がったからとのことで連絡があり、先日の研修会にも参加してくれています。
 それで本日の見学となったのですが、いい年齢になっているということもありますけど見学態度がとてもいいのです。挨拶だけでなく一度指摘した点についてはすぐ修正されてきますし、何より「何が見学したいのか」がハッキリしているのです。
 学術的には今まで通っていた会派との考え方や言葉の違いによって漠然としすぎている面はありましたけど、研修会で学んだことはすぐ実践投入する態度は考えてみれば当たり前なのですが久しぶりに「まともな鍼灸師に出会えたなぁ」という感じでした。

 人間を磨くという意味でも、研修会へ参加することは鍼灸師として絶対条件だと改めて感じた次第です。