もう一週間も経過してしまったのですが、今年の第十五回夏期学術研修会滋賀大会の第一回講師合宿を終えることができました。
「講師同士の勉強会なのだからそれほど特筆すべきことは・・・」と思われるでしょうけど、夏期学術研修会は漢方鍼医会が確実に踏み固めた学術を全国レベルで確認する年もありますけど、新たな試みを一気に全国レベルで浸透させる挑戦の年もあります。
ここで書いている以上、今年はもちろん挑戦の年です。
あまり微に入り際に入り書いていると漢方鍼医会内部の人しか理解できない文章になってしまいますし、まして挑戦の年なのですから私しか理解できない文章になっているとも限らないので、どこが苦労をしてどこがポイントだったかをできる限り簡略に記してみます。
まず昨年から取り組んできた二年計画での夏期学術研修会であり、一昨年に「足並みを揃えるためのマニュアルがない」との苦情からそれこそ微に入り際にいったマニュアルを執筆して一部からは感謝されたものの大半からはまた苦情が寄せられたのでありました。
しかし、敢えて細かなことを書きまくったものであり特に脉診の基礎の基礎については統一された指さばきが戻ったので、制かは確かにありました(論文級の文章を書いたなら大抵は自己満足だけはしますけどね)。
それと、どうしても今年の布石としたかった経絡を軽く撫でる軽擦についての見直しもされていたこと、途中段階としてはまぁまぁというところだったでしょう。
さてこれを受けての今年ですが、テーマを「証決定への手順」と大きく定めました。
ここで証とは何か?
福島弘道先生が「証とは、病の本体であり治療目標」と簡便にまとめてくれているのですが、どの医学でもそうですがまず病の本質を見極めることが一番でそれを漢方医学では証といいます。整理を踏まえた上で、病理そのものと断言しても間違いではないでしょう。そして漢方医学の特徴は、証が決定できたなら治療法も同時に指示されてきます。
もちろん病がどれだけ理解できているかによって治療効率も変わってくるのですけど、初心者は初心者なりの証決定がありますし理解のできない病状でもとりあえず証決定ができるように漢方医学は組み立てられているので、どんな場面でも治療ができるというとても優れた医学なのです。
この証決定の足並みが揃っていなければならないのですけど、ところが臨床室での鍼灸師は一国一城の主であり誰も同じ臨床をしていません。それは居住地域や治療室の状況などでチェーン店展開されないいい面なのですけど、理論面は合わせていても実際は自分の得意とする技術のみに走ったのでは同じ組織に所属している意味がなく、基準線をもう一度し切り直そうというのが今回のテーマなのです。
漢方鍼医会発足から突っ走ってきて、治療の考え方と技術と幅は大きく広がりました。しかし、残念ながら大きく束ねることを怠っていた節があり、悪い書き方では「無法地帯」を作り出していたのを露呈したのは昨年の大会でした。
この状況をそこまで想定していたわけではないのですけど証決定を踏み固めるような大会テーマをちらしの段階で既に掲げていたものですから、本部の学術委員会にも所属させてもらっているのですけど合宿直前までずれ込みましたが「証決定の要点」を学術委員会でまとめることができました。
これを先読みしつつ合宿の実技を考えることはとてもしんどいことであり、時間待ちもあったりしてゴールデンウィークも暇さえあれば頭の中では考えが回っていましたね。
そこへ衛気の手法と営気の手法を、モデル患者の腹部を使って修練するという伏兵を偲ばせておきました。
証決定の要点に基づいて選穴まで含めた証決定を行い、軽擦によってそれを確認する。さらには自分の行う手法が本当に衛気・営気となっているのかを事前に見せつけられていますから、治療の深さと手応えが一気に増してきたというわけです。
実技中にも沢山のアドバイスと指示を参加された先生方から頂きましたし、私一人で考え出したことでもなければみんなで作り上げていく大会で滋賀漢方鍼医会が一番成長の恩恵を受けさせてもらっているのですけど、主催者としての役割が果たせつつあるので三分の一は行事が済んでしまったような気持ちです。
もちろんテーマである「証決定への手順」は、大会当日に参加者全員で作り上げてゆくものなのですけど、もう一つ重要なことが発声してきます。
それは衛気の手法と営気の手法をモデル患者の腹部を使って修練することが正式に採用されることで、これは全国でも追試がなされるようになります。すると手法が全国統一されるわけです。今までは指導者の指示により手法の訓練をしてきたわけですが、基本刺鍼に加えて実際の手法修練がなされれば漢方鍼医会の会員の手法は全国どこでも同じということになります。
同じであるはずのことが実は同じでないことが、技術というものでは公然の秘密であり特に鍼灸術においては似て非なるものでも同一としてくくってきたのですけど、どこの鍼灸学校でも研修会でも実現されなかった手法の統一が第一歩を踏み出すのです。
自ら「これは画期的なこと」と思っています。
長くなりましたので今日はここまでとしますが、とにかく二年間掛けて準備してきたものですから成功させねばなりませんし、それだけのものを皆さんへお返ししたいとあと三ヶ月頑張っていきます。