ワープロ専用機で作成していた自作パンフレットをパソコンのワープロソフトでも製作できるノウハウが構築できた、たったこれだけのことで四回もネタを使い回してしまったのですけど、さらにおまけでカルテ管理が紙からワープロ専用機からデータベースソフトから電子カルテへと移行してきた仮定について書きます。
でも、単なる自己満足の文章ではなくそれだけデータ管理が重要であるという話なので、少しお付き合いください。
先日にこんなニュースが流れていました。2011年から保険診療報酬の請求(レセプト)がオンラインに義務化されるのですが、これに対して大阪府でアンケートをしたところが六割もの開業医が廃業を視野に反対というのです。反対意見のみであれば、もっと高い数字にもなっていました。
理由としては新しいシステムに付いていけない・業務が煩雑になりすぎる・端末導入のコストに耐えられないなどでしたけど、年齢的にキーボードを受け付けない医師がいたとしてもカルテ記入以外の普段の事務作業などしていないはずですし、紙媒体が減るのですから業務の煩雑化も該当しません。分からないのは端末導入のコストに耐えられないという意見で、今さら家屋を改造して四畳半もあるようなミニコンピュータを設置せよなどと迫られているはずはなくせいぜいパソコンに専用コンバータをプラスする程度のはずなのに、それができないとはどうしても考えられないのです。
強豪の大学野球部の監督が経営している整骨院で、受診もしていない野球部員の名前で不正請求がされていたというニュースが大々的に報道され、また各所で保険の不正請求のニュースが絶えないのですけど、レセプトがオンライン請求に一本化されると困ることがあるのではないかと想像してしまうのは私だけではないでしょう。
医療とはご奉仕の仕事ではありますけど、変速の激務をこなしていたりモンスター患者の理不尽な振る舞いでストレスが溜まるなど決して生やさしい業務ではありませんから経済的な面くらいは安定していないと「やってられない」というのが事実ですが、レセプト提出のオンライン義務化くらいで廃業を検討するのでしょうかね?それなら鍼灸師の不安定な身分制度は、もっと「やってられない」のですけどね。
さて前置きはこれくらいにして、当院でのカルテ管理の流れです。
改行をしたのは平成元年の三月であり、繰り返しているようにワープロ専用機の全盛期でした。当時はマイコンと呼んだ方が親しみやすかったのですけど既にBASICを搭載したパーソナルコンピュータが発売されて十年近く経過しており、MS-DOSによる業務アプリが企業では導入されデータベースソフトも実用段階に入っている時代でした。
しかし、個人レベルで顧客管理ソフトを導入するにはまだまだ敷居が高く、ましてカルテ管理ソフトというものは受注生産の時代でした。実際に酒屋の店主が組合の勧めで高コストの顧客管理ソフトを導入したのはいいのですが、打ち込み作業がはかどらずハードディスクのクラッシュを気にするあまり心臓神経症になって継続治療をしたという記憶があります。
そこで考えたのがワープロ専用機に搭載が始まったカード型データベース機能で、まずは紙に記入してもらったカルテを打ち込み直すのにそれほどの手間を必要としません。データベースの利用目的のほとんどは休診を含めて緊急の予約変更をお願いするための電話番号検索であり、診療内容そのものは全て頭に入っていましたから数年はこの状態で満足でした。
ところが、ワープロ専用機ですから記憶媒体がフロッピーディスクであり、データベース専用にフロッピーを用意したとしても300件程度しか一枚に入りません。最初のものは五十音順にフロッピーが用意されていても、途中からは新規の患者さんのデータを追加するのでどのフロッピーにデータが入っていたのかを探すだけでも一苦労となってしまいました。そこでパソコンのデータベースソフトが個人利用のレベルになっていたので乗り換えることにしたのです。
ここは活字からの転記作業ですから、土曜日だけ事務員のアルバイトを入れていましたのでちょうどいい仕事であり、検索のスピードアップは感動ものでした。
けれど、まだ個々の診療記録を個人データとリンクできておらず、電子カルテの段階ではありませんでした。年間一括の領収書を発行するのに予約ノートを調べ直したり、論文作成に細かな診療記録が残っていないという不便さもありましたし、何よりも視力の関係からMacintoshからスクリーンリーダーの充実しているWindowsへOSを乗り換える決断の目玉として「電子カルテ」の導入を考えたのです。
スクリーンリーダーでも使える電子カルテソフトが存在しているという情報はMS-DOSレベルからありましたし、出納帳ソフトと連動できるという日本障害者ソフトからお試し版の電子カルテソフトを使ってみて、パソコンが不得手だったり文章作成が不得手という助手の教育という新たな問題は発生してきたのですけど、鍼灸の世界にも電子カルテでの個人データ管理と詳細な診療記録の保持が必須と考え、導入コストと環境整備には労力と資金が必要でしたけど乗り換えることを決断しました。
実際にはWindowsへ本格的に乗り換えてから電子カルテが指導するまで一年半ほど準備に要したのですけど、滋賀県立盲学校の同窓生を中心とするメーリングリストに投稿したメールをたまたま読み返していたなら、自作パンフレットの話(その3)、ワープロ専用機からデータ変換で紹介しているデータ変換サービスがフロッピー一枚あたり6000円で三枚発注したのですけど「手打ちで変換している労力に比べれば格安」と記載があって、データベースから吐き出させた変換用データから診療記録を切り捨てて個人情報のみを継承するという荒技ながらも数万円で電子カルテで活用できるように変換プログラムを受注生産してもらっても人件費に比べれば何分の一で済んだと書いてありました。それくらい個人情報の管理とは重要であり資産だということです。
運用の始まった電子カルテなのですけど、当初は診療中のどのタイミングで打ち込みをするとかスクリーンリーダーが逆にうっとうしい助手とどのようにしてパソコンを強要していくべきか、実際に書き込む時の約束事や文章スタイルを試行錯誤したりバックアップの取り方など運用が始まってからの課題もあったのですけど、その有益制は一ヶ月も経過しない間に如実に現れてきました。
詳細な診療記録は頭の中に入っているといっても、それは助手のいない時代のものであって院長の知らない情報が書き込まれていたりうっかり忘れている事項があったりなど、過去の記録を読み返す癖はすぐ自然に身に付きました。
年が変われば領収書の発行にもその便利さは効力を発揮し、個人情報も直接打ち込むようにしたことから氏名の読み間違いや不正確な住所記載などがなくなり、ペーパーレスのカルテ管理というものがこれほど便利で有効なものだと感激したものです。それに年数が経過すればするほど、詳細な診療記録がどんどん重要性を増しています。
鍼灸の世界では保険診療を推進しているグループでのレセプト作成に電子カルテは応用されていますけど、残念ながら個人情報や診療記録の管理に電子カルテを導入しているケースをほとんど聞きません。研修会でも電子カルテの導入を呼び掛けてはいるのですが、理由を付けては敬遠されてしまいます。
どうして敬遠されてしまうのかが私には理解できないのですけど、ネットブックのような低価格ノートパソコンが普及してインターネットには接続しないカルテ管理専用のパソコンを一台追加しても負担の掛からない時代になったのですから、鍼灸院のためだけでなく患者サイドの利益のためにも電子カルテの導入を強く推奨します。