『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

ポリシーある行動が、成功へとつながる

 2009年の衆議院選挙では、一時的な下野を除けば半世紀以上も政権を独占してきた自民党から民主党へと政権交代がなされたのですけど、これは自民党の腐敗しきった癒着体質に国民が嫌気が差したというのが事実だったでしょう。
 そして沖縄では基地問題に関して「最低でも県外・できれば国外」と演説をして期待はさせてくれたのですが、政権を握ったなら迷走したあげくに自民党の施策をあれだけ批判し続けていたのに原案を通してしまうといううそつき。「うそつきは泥棒の始まり」という言葉がありますけど、日本では泥棒に政治を任せてしまったのでしょうか?少なくとも、税金泥棒はしているでしょうね。

 この状況に至っては、一人の国民として・一人の鍼灸師として内部からわき上がってくる思いを自分の中だけに留めておくことができなくなりました。もう政治によって政策が整備され、名称はオルタナティブメディスンでもカウンターメディスンどちらでも構いませんが鍼灸を医療制度として認めてくれるような期待をしない方がいいとハッキリ認識しました。
 では、鍼灸はどのような道を歩めばいいのか?鍼灸独自の技術を民衆の力でアピールし、制度の方が整備されてくるような動きへとすればいいのです。

 「制度の方が整備されるような」と簡単に書きましたけど、そのような事例があるのか?わかりやすいものではAPPleGoogleといったIT企業は独自の技術開発とサービスにより、全世界の経済の動きを変えてしまっています。インターネットはクモの巣状にネットワークを張り巡らすことでどこかのサーバがダウンしても全体はダウンしないという元々軍事技術のために開発されたシステムではありましたけど、これが一般開放されてからの発達は誰もが知るところであり今やインターネットなしの生活は考えられないほどで、逆にGoogleの技術をアメリ連邦政府やFBIが活用しています。APPleiPodは音楽の楽しみ方そのものを変えてしまいましたし、一時は財政難からライバルのマイクロソフトに全面支援を受けるという時期もありましたけど今や時価総額マイクロソフトを追い越してしまいました。
 今日ではAPPleGoogleのニュースが流れない日はないという注目の企業ですけど、マイクロソフトに追いつけ・追い越せの時代には協力関係にあってもその開発姿勢は正反対になってきました。技術的に取り組めるものは一通りなんでもやってみようというように見えるGoogleと、独自性を貫き通し少しのアイデアくらいでは動かず常に革新的な製品のみを求めて販売チャネルまでコントロールしてくるAPPle。どちらがいいとかどちらが最終的商社かを議論したいのではなく、書きたいことはこの二つの企業にはポリシーを感じるということなのです。

 かつてソニーウォークマンを発売し、それまでオーディオは屋内でどっしり構えながら聞くものという概念を覆して、好きな音楽を好きな場所へ持ち出せるようにして大ヒットさせました。ここには「ユーザーが成し遂げたかった夢を実現させた」というポリシーを感じるのですけど、その後に日本の家電メーカーからは全世界的なヒット商品がでていません。小さな携帯電話にあれだけの機能が詰め込めるのに、デジカメやコンパクトムービーがこれだけ高性能なのに、そしてパソコンも台湾企業に追い抜かれるまでは性能とコストの比率が抜群だったのに全世界ではヒットをしていません。しかし、iPhoneには日本メーカーの部品が多く使われ、全世界のハイテク商品のかなりが日本メーカーの部品がないと組み立てられないのも現状です。
 日本には技術力があって世界を支えてはいるのですが、ポリシーがないために踏み台にされてしまっているのです。最近のニュースでも携帯電話のシムロック解除が話題になっていましたが、「日本の携帯電話はガラパゴス状態だ」と表現されていました。独自性を追求しようとして世界標準からかけ離れてしまったという意味で用いられていたようですけど、本当にそうなのか?利益がどんどん上がっていた時代に利益追求のために新機能を詰め込む競争をしていただけの話で、ユーザーが成し遂げたい夢はメーカーのエゴによってどこかに置き去りにしてきた結果ではないでしょうか。

 さて、鍼灸の世界へ話を戻します。医療の世界全体がそうなのですが、患者さんが求めているものと医療側の差が大きいことをいわれて久しいのですけど、この溝が全く埋まりません。新発見や技術革新のニュースばかりが目立ち、新機能を詰め込みまくって実際に利用している用途はほんの一部だけという日本の携帯電話に近い状態が西洋医学でしょうね。ここにはポリシーを全く感じません。いや、人間として素晴らしくポリシーを持った医療活動をされているお医者さんも大勢おられるのですが、西洋医学全体としてはの話です。
 鍼灸はスタイルがほぼ固定しているので、新機能詰め込み型の医療にこそなっていませんけど、鍼灸師は化学的な変化が捉えられたというニュースに一喜一憂しているばかりで、ここにもポリシーを感じません。いや、鍼灸師にもいわゆる経絡治療という分野の人たちはポリシーを持っているのですが、かなり残念なことにほんの少数しか存在していません。
 まず日本の鍼灸師が生き残るためにはポリシーを持つことであり、それは経絡治療へと全面的に転換することです。業界トップや学校関係者が頭を切り換えることであり、それから技術的には今までと真反対のことをするのですから相当に修練が必要になってきます。でも、ポリシーを貫き通すことであり、鍼灸師が生き残るためです。

 ここでまたAPPleの話に戻りますけど、"AppleⅡ"という拡張性に優れたBASICマシンで世界に知れ渡ることになったのですが、その後は必要性のない贅沢な仕様で固めて大失敗したAppleⅢやマウスは採用していたものの拡張性のないLisaという寄り道をしてからネットワーク機能や音声出力などがあり拡張性に優れたMacintoshへ到達しています。マウスとアイコンとメニューバーによる専門知識を習得しなくても操作できる現代のパソコン操作を確立したのですけど、ご存じのように世界シェアのかなりはWindowsです。
 これは「我々のやっていることは革新的だ」という自負のみで、技術力はあっても「ユーザーが実現したいものはこういうもののはず」というポリシーが欠けていたのでしょう。そのため熱狂的な一部のファンは獲得できたものの、ニュースに登場し常に話題の中心にいながらもシェアが獲得できなかったのでしょう。そこをしばらく社外にいて復活したスティーブ・ジョブスは着目し、iMacという衝撃的なパソコンを世に送り出しiPodiTunesでその知名度とポリシーを広げ、iPhoneでの大成功からiPadの世界的ブームを巻き起こしていると分析できるのは素人の私でも簡単なことです。

 また話を鍼灸へと戻しまして、先程「日本の鍼灸師が生き残るためにはポリシーを持つことであり、それは経絡治療へと全面的に転換することです」と書きましたが、経絡治療に乗り換えるだけでポリシーがすぐくっついてくるわけではありません。言葉は乱暴ですが、いわゆる刺激治療という広く行われている患部へ直接鍼を深く刺鍼する治療法では治療家の満足が優先的で、一部の重く響いてくる感触が好きな熱狂的ファンを除いては敬遠されても仕方ありません。APPleはそれでも本当に技術力がありましたけど、刺激治療では技術力がどれほどなのかの指標がないのが悩ましいところです。
 これに比べると選経や選穴が食い違っていると効果が発揮されないどころか反応が発生して悪化をさせてしまうので、経絡治療は患者中心のシステムとして元々が組み立てられています。でも、システムに頼っているだけでは小手先の技術に過ぎず、鍼灸業界の中で常に話題の提供数が多いのに大多数にはならなかった要因ではないでしょうか。「技術力があるんだぞ」と自分の鍼灸院の中で叫んでいても一日の患者数は知れたものにしかなりません。
 差はポリシーをどのように持つかで出てくるはずです。ポリシーある行動が、成功へとつながるはずです。一日の患者数のみが成功の指標とはいいませんけど、やはりその鍼灸院がヒットを連発していなければ成功とは言い難いのですから、笑顔で気楽に友達の家へ患者さんが来るような鍼灸院をこれからも私は追求していきたいですね。

 さぁ最初に政治の問題を書いたのですが、このエントリーを暫定的にアップした直後に鳩山由紀夫の総理大臣辞任が発表されました。何というタイミングでしょう。「ここはあかんで」という政党はあるものの私は基本的に無党派ですが、社民党の今回の行動にはかなり感動していました。逆に連立パートナーを切り捨てた段階で「この総理大臣はもうすぐ辞任するぞ」と、治療室で予言をしていました。「国民が話を聞かなくなった」と最後の挨拶でのたまってましたけど、ポリシーのない行動には誰も付いていきませんし耳も貸さなくなるでしょう。
 鍼灸はそのような没落の道をたどらないように、団体としても個人としてもポリシーを持った行動をしていきましょう。