『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

医事寸言(前半)、情報は選りすぐらねばならない時代

この文章は2012年02月12日に行われた、漢方鍼医会本部における月例会での朝の挨拶「医事寸言」を録音から原稿化し加筆したものです。今回は前半部分です。

本部理事  二木 清文


 皆さん、おはようございます。ちょっと「あけましておめでとうございます」というには遅いですけど、2012年で初めての研修会となりますからね。まぁ年度という点では、途中ではあるのですけど。
 2012年は、いよいよ20周年記念大会が8月25日26日27日に開催されます。漢方鍼医会の20周年記念事業として、新しくなるテキストは既にほぼ出来上がっている状況でありますし、それから取穴書についてもかなり作業が進んでいて記念出版の準備は整いつつあります。それから昨日は、その20周年記念大会の明くる日から開催される第18回夏期学術研修会の講師合宿が私も参加していたのですけど行われていました。夏の研修会のためにこんな時期から合宿をしているのです。ということで着々と準備が進んでおりますので、夏には皆様三日間を万障繰り合わせて20周年記念大会に参加して今までの漢方鍼医会を踏まえ、そして新たな未来を開く大会としたいと思いますので今から準備をよろしくお願いしたいと思います。
 で、そういう大事な年明け一発目の挨拶に僕なんかが出てきて、「よくそんな勇気があったなぁ」と他の先生方のことを感心しているのですけど・・・。朝から新作落語でも一発やらかすのではないかと心配されなかったのでしょうか?

 話を前へ進めまして、最近にNTTドコモが通信障害を二連続で発生させていて、この年度中では通算八回目といいますからほとんど毎月通信障害が発生していることになり、AUも通信障害が発生していましたね。これが東日本大震災の直後というのであれば分かるのですけど、その当時より頻繁というのはおかしいですよね。大震災以後には情報交換に威力があったということでツイッターをやるようになった人が増え、ニュースでいわれるようにスマートフォンの普及で通信料の増加が通信網の普及を追い越しているからです。
 それから、民主党のことをあまり個別にはいいたくはないのですけど、福島原発事故への対応は後手後手の上に情報が操作されているのではないかと思いたくなる節が見え見えでしたから、他の政党も復興を急がねばならない時に国会を紛糾させるなどしてくれますから情報操作も似たり寄ったりかもなので、東日本大震災以後は情報の取り方を考えねばならないのではと思ったのです。
 ポッドキャストというのは名前くらいは聞かれたことがあると思うのですけど、インターネット上に定期的にアップされてくる音声ファイルを聞けるようにしてくれるサービスのことです。大抵は自動的に収集してきてくれるプログラムに任せて音声ファイルを保存してから聞くのですが、ストリーミングといってインターネットへ接続させながら聞く方法もあります。そしてiPodアイポッド)で聞くというのが代表的なスタイルですね。ここにも第四世代iPod nanoがあります(持参したものを見せている)。

 これは16GBモデルで1650曲くらい入っていて、その他にビデオが入ったりポッドキャストが入ったりしています。それがポケットの中へ入ってしまうというのですから、凄い機械ですよね。これをパソコンへ接続すると、それまでに配信されたポッドキャストをまとめて落としてきてくれるiTunesというプログラムが自動的に立ち上がってきます。何も考えていなくても聞き終わったポッドキャスト番組はiPodから削除されていきますし、新しいものがあれば追加するという転送作業を自動的に行ってくれます。
 うちの治療室なのですけど、朝は毎日放送の「ありがとう浜村淳です」をまずは聞くことになっています。近畿地方では超有名なラジオ番組です。次は視覚障害者向けラジオ局で朝刊朗読をしてもらえるので10時から聞くことになっています。午後は音楽やラジオを適当にしていたのですけど、東日本大震災以後は情報収集のためにあっちもこっちも色々と登録したのでポッドキャストを主に聞くことになりました。ちなみに一気にデータを落としてきてくれますから、東日本大震災直後のトラフィックを圧迫しないようにもと考えた処置です。
 「ラジオ日経」って放送局、ご存じですか?昔は「ラジオたんぱ」の愛称で呼ばれていた日本短波放送のことで、2003年から日経新聞社がバックということでラジオ日経という名前に変わっています。短波放送ということでほとんどの方には馴染みがないでしょうけど、経済番組のいいものを今ポッドキャストで流してくれています。ここの番組からは、多く勉強させてもらっています。

 それから今一番注目して聞いているのは、TBSラジオがキー曲となって夜に放送している「ニュース探究ラジオ Dig」です。近畿地方でネットしているラジオ局はないのですけど、割と全国の広い範囲で聞ける夜のニュース特集番組ですね。宣伝マンではないですが、ホームページ上でストリーミング放送もされていますから、興味のある人は全国のどこからでも聴取できます。ここは毎夜の特集枠が一時間あるのです。一時間というのは、テレビのニュースでの特集枠になれていると、とても長く感じますよ。実際に、かなり長いですけど。
 テレビの特集枠というのは、ビデオが準備してあるので結論ありきで進んでいますよね。資料として流したビデオと、全く違う答えに導くことはできないからです。つまり、結論が先にあってそれに合うようにビデオが製作されているケースがかなりあると考えるのは、不自然ではないでしょう。
 でも、ラジオというのは完全な生放送ですし、一時間も枠があると結論ありきにはならないのですよね。思わぬ展開になることもあって、別の場所へ着地してしまったのではということが何度もありました。それをポッドキャストで出してしまうというのもすごいところですけど。放送では治まりきらなかったので、ポッドキャスト用に追加収録をしたというのをも一度聞いたことがありますから、特別なこととは話されていなかったので何度もやっているのでしょうね、きっと。

 心に残っているものとしては、ポリオが不活化ワクチンに今度変わるのですけど今まで日本は生ワクチンでした。生ワクチンだと100万人に1.4人が発病するといわれているのですけど、ところがその1.4人というのはポリオの初期症状を診たことがない医者ばかりになっているのでどれが発病したものかが分からない。それに生ワクチンを飲んで数週間くらいで異常がでれば分かるかも知れませんが、10年後くらいに発病するというケースも珍しくないそうなのです。
 では、ポリオのワクチンは使わない方がいいのかといえばこれは、絶対的にやるべきです。まだ自然界にはポリオウィルスがあるので、例えばお父さんが海外出張をしてウィルスを持ち帰ってしまったなら、お父さんの世代はワクチン接種を受けていますから発病しませんけど家族の子供に感染する危険性は大きいでしょう。将来の発病リスクは、生ワクチンの比ではありません。
 しかし、生ワクチンを先進国で未だに使っているのは日本だけですし、先進国以外でも生ワクチンを使っているところはないのです。他の国では全て不活化ワクチン、つまりポリオウィルスは殺傷されていてDNAだけが残っている状態のものを投与しているのです。これなら発病の危険性はゼロです。ところが日本の薬品メーカーは不活化ワクチンを製造したことがなかっただけの理由で、たったそれだけの理由で生ワクチンなのです。
 これが関東の知事会議で話題となり、「そんなんあかんやんか」ということで神奈川県は希望者には神奈川県の費用も継ぎ足して不活化ワクチンの接種を開始すると宣言し、話題が急に大きくなってきたのです。今は大騒ぎになっていますけど、大騒ぎになる前にここの特集で取り上げられていたのです。特集で取り上げられたので、大騒ぎになったのかはさだかではありませんが、年度が替われば不活化ワクチンへ全面的に切り替えることとなりました。

 ちょっと余談になりますけど、騒ぎが大きくなり出した時に厚生労働大臣が「2・3年待って欲しい」という発言をしています。どうして待たねばならないのかという質問に「国内で作ったものの方が質がいいから」と答えたのですけど、まだ作ったこともないのにどうして国産の方が質がよくなるという話になるのでしょうね。これは産業に直結するからでしょう。研究費が計上されるとか研究員の雇用が産まれるとか研究所を新設するとか、産業が立ち上がることによって派生するものが次々と出てくるからです。でも、これは軍事産業原子力産業と全く同じことで、「このようなことをしなければならないですよ」とラッパを吹いたなら関連する事業へも派生して潤ったように見えているだけの話であって、『打ち出の小槌』からどんどんお金が出てくるようになったわけではないのです。これと全く同じことを繰り返そうとしていたわけです。
 話を本筋に戻しまして、このような大臣の対応ですから反発が半端なものではなくなり、要するにたじたじになって海外の不活化ワクチンを導入しようということで落ち着いたのです。これであれば、絶対に感染を起こす危険性はありません。

 情報というものは、自分でいくつもある中からソースを見比べて、その中からどれが正しいのかを選りすぐらなければならない時代に入ってきたのではないかと思います。その正しい情報のためにはポッドキャストというのはとてもおもしろい存在だと実感していて、毎日午後の半分はポッドキャストを流すようになったわけです。
 他には宇宙関係のポッドキャストも聞いているのですけど、ビックリするほど人工衛星は打ち上げ続けられているんですよね。少なくとも月に2回や3回はどこかでロケットが打ち上げられていますし、それから月の誕生も含めて成り立ちがよく分からないという話をされた時にはビックリしました。「アポロ13」の映画を見られた方はご存じでしょうが、月の裏側へ回るとごつごつした岩山ばかりで常に地球の側を向いている表面とはあまりに違っています。ですから、天体と天体が合体して月ができたのではないかという説さえあるくらいで、月の誕生については説明ができないらしいのです。
 それから「あかつき」が金星へ飛んでいったのですけど周回軌道への投入が失敗しているのですが、2015年に再び投入のチャンスが巡ってきます。それを避けて、「はやぶさ」もいきなり糸川へ向かったのではなく一度地球の近くへ戻ってきて地球の引力を利用して飛んでいったように、金星に一度近づいて金星の引力で放り投げてもらうようにするスウィングバイをすればスピードが上がるらしく、そうすれば2016年に元々予定していた軌道へ今度はほぼ確実に投入できるという話です。ただし、地球よりずっと太陽に近い場所を飛んでいるのですから一年間で太陽からの影響により機器が傷ついてしまうのでどうしようか迷っているというのが事実らしいです。こんなことは新聞を普通に見ているだけならなかなか分からないことなのですけど、興味のある人たちが見つけてきて調べて順序立てて喋ってくれるから分かることなんですよね。
 また余談になりますけど、「その一年間は一体どうなるの?」というところなのですが、JAXAの人たちが「根性で何とかなるでしょう」って、人工衛星がどうやって根性を出すのかなぁという話がありますけど・・・。しかも太陽に一番近くなる近日点の通過が一年間で倍になってしまうらしいのですが、その時には高感度カメラなどが太陽に背中を向けるような姿勢へ制御するというらしいのですけど、そんなに高度なことがあっさりできるらしいです、ビックリ。「はやぶさ」の成功直後であり、宇宙帆船「イカロス」の実験も大成功でしたから「あかつき」も当然成功すると信じて疑わなかったのですけど、それだけ金星への軌道投入というのは技術的に難しいことだったのだと分かります。

 その他には医療系のポッドキャストもありまして、一般素人向けですから高度な医療知識というわけではないのですけど、こちらでも意外と知らなかった知識を勉強させてもらっています。特に法律的な手続きというのは鍼灸の世界とは無縁に近いので、「へぇーっ、そんなことをしていたんだ」ということがありましたし、お医者さんの立場でも現代医療システムの壁というか様々な足かせから本当に自由な診療ができないことへの不満を聞くこともあります。
 日経新聞社が発行している「日系トレンディ」は、文字通りトレンディの蛍光が分かりますしその先を行くコメントが流れてくるので、私自身は流行に全く左右されない人ですけど、年間ヒットランキングから「これは購入したい」という商品があったりしましたね。時々やってくれるグルメ特集なんかは、思わず耳が釘付けになってしまいますね。
 それから「週間宇宙天気予報」という番組もあって、主には太陽活動の報告なのですけど「そんな風に宇宙の観測はされているんだ」と意表を突かれることが何度もありました。宇宙以外の科学番組では、関門海峡の強い潮流で発電する試みとか恐竜の謎から、天体の不思議や植物のことからニュートリノまで掘り下げ方は浅いですけど幅広く紹介してもらったりしています。もちろん落語も毎週一本は聞いて、話芸の肥やしとしておりまする。
 そしてIT関連の登録番組が実は一番多いです。「Apple news radio ワンボタンの声」という番組を検索から見つけて話題にはまってしまい、ポッドキャストを色々と探すようになったのです。まあこれは趣味の範囲が大きいですけどクリエイティブな話題は想像力が膨らみ病気の訴えばかりを聞いている治療室にはカンフル剤となっています。視覚障害者でもインターネット上にある動画の楽しみ方を知ってしまったり、タブレット端末を本格導入するきっかけにもなりました。
 ポッドキャストはほとんどが無料で配信されていますので、情報源の一つとして聞いたことのない方は考えてみてください。