『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

漢方鍼医会20周年記念大会レポートその1、まずは客観的報告と全体的

 個人的には「遂に」というか「やっと」というかの感慨を持って、2012年8月25日(土曜日)から8月27日(月曜日)までの三日間、漢方鍼医会20周年記念大会と第18回夏季学術研修会が東京で開催されました。まずは客観的な報告から。

 8月25日は「漢方鍼医会20周年記念大会」であり、会場の「東京ガーデンパレス」へ会員が全国より参集してきました。ここはJRお茶の水駅から徒歩五分という地方から来てもすぐ到着できる場所をということで人海戦術によって探し出してもらった会場です。
 特別講演の第一席は、『皮膚感覚の不思議−触れる!安らかな心・よみがえる身体』ということで、桜美林大学心理・教育学系准教授 山口 創先生にお話し頂きました。少し抄録から引用させてもらうと、「皮膚と心の関係は、現在の科学では一方向的な因果論でしか捉えることはできないが、実際には2つの方向性がある。1つは心が皮膚に影響を与える、という見方である。これは我々の常識の範疇にあり、羞恥心のあまり顔が紅潮する、感動のあまり鳥肌が立つという日常経験と合致する。もう1つは、皮膚への刺激が心に影響を与える、という見方である。こちらは、マッサージを受けて心が癒されたり、温かい温泉に浸かってリラックスした、という場合であろう」ということで、我々が実践している「漢方はり治療」は皮膚へ接触する程度の衛気・営気の手法が妙味であるが、それを証明してもらえた公園でした。まさに「ていしん」が顕著な効果を上げられること、そのものに言及して頂いたような感じでもあります。「触れる」ことの大切さを、改めて教えて頂きました。
 第二席は『私の履歴書 古典治療と出会って』ということで、漢方陰陽会会長 池田政一先生にご後援頂きました。池田先生は今さら語るまでもない先生ですが、漢方鍼医会発足から顧問を務めて頂き、20周年を以て勇退される最後のご後援でした。でも、春先には体調を崩されていたのですけど今はご回復されて、「呼んでもらったなら来年の四月も来るよ」とのことでしたけど。
 そして夜は記念パーティーであり、懐かしいスライドの上映や趣向を凝らした寸劇などもありましたけど、最後のカンツォーネの歌声は圧巻でした。東京の会員には、芸達者な人が沢山いますね。

 8月26日と27日は第18回夏季学術研修会であり、初日の午前中は会長講演「漢方はり治療のあゆみ」、基調講義「漢方はり治療の未来に向かって」、取穴書作成委員会から新しい取穴書についての説明と多彩な内容で始まり、午後は全て実技というハードな内容でした。
 二日目は午前中にパネルディスカッション「これからの漢方はり治療 ー 証決定と臨床の間にあるもの」が開催されて、初めての試みで参加者は発表を受けてそれぞれの小さなテーブルで議論をするという形式がなされました。これは従来のシンポジウムだと一部の人だけが発言をしてその他は寝ているという光景になっていたものが、全く誰も眠れないという状況を作り出していました。そして午後には、これを受けての実技がまたやって来るという臨床に徹した研修会だと自負しています。

 前述のようにパネルディスカッションという形式で入門のごく一部を除いては全員が討論へ積極的に参加するという形態を一つ作り出せたのは、大きな成果だったと思います。そして実技なのですけど、研修部では従来より大きく取穴が変更された経穴について、取穴書作成委員会が行った検証方法と同じやり方で脉診しながら取穴をするという新しいレベルでの取穴実技になったことは今後に大きな意味があると思います。
 今まではモデル点を覚える実技であり、小里方式の中で「生きて働いているツボ」の見つけ方や感覚などは修得してきたのですけど、今後は流注の中でも一番濃度の濃い「経に乗っている」ことを確認しながら取穴することになります。これにより「経に乗っている」感覚が会得できるようになり、しかも経穴は凹んでそのものが触知できるようになりますから脉状変化は今までのものとは比べものにならないほど大きくなり、本治法の鍼数が激減してきます。というよりも、今までがそこまで変化させられていなかったのであり、脉状を整えようとして二本目・三本目と鍼数を増やさねばならなかったのではと反省をしています。もちろん二本目が必要な病理状態はあるのであり、必ずしも一本で決めてやろうと方向転換したのではありませんが、それでも一本のみで解決できるケースが多いこととその方が病理考察にも変なつぎはぎをしなくてもいいので、少数派の美学に今は突進している感じですが・・・。


 さて、三日間もあった大会ですから量が多く分割して掲載することにはなるのですけど、客観的な報告が終わったので軽い裏話を。
 服装については、ちょっとした議論がありました。節電が叫ばれていてクールビズの時代ですから、「ラフすぎなければいいのでは?」という意見もあったのですが、以前の記念大会では地方組織を代表する人にはジャケットとネクタイを・それに準ずる人はネクタイをという記憶があったので、私が統一を提案してみました。
 外来講師の先生は何もいわなければスーツを着用されてくるでしょうし、会長クラスや講師の先生に応対する人たちもスーツということになりますから、ここは漢方鍼医会の足取りを確かなものとしての記念大会なので理事以上はサマースーツを、女性は準じた服装をということになったのでした。普段の月例会ではカジュアルな服装しかお互いに見たことがなかったので、これは大会を引き締めるのにとてもよかったと思いますよ、自画自賛ですが。

 大会日程なのですけど、これを決定するには二年以上前から議論噴出であり、一番のターゲットは2012年の秋分の日が土曜日になるので放っておいても連休ですから月曜日を継ぎ足すこと。もう一つは海の日がハッピーマンデーとなるので、ちょっと期日的にはきついですが土曜日を何とかしてもらえれば余裕のある参加状況になること。でも、ホテル側からどちらもブライダルが必ず入るので困るという返答。これはブライダルの方が儲るだけではなく、宿泊施設に優先順位があるために充分な部屋数が確保されないだろうからという理由もくっついていたので、あしからず。
 それで25日はメイン会場の午前中が既に予約されていたのですけど、短時間で模様替えをするというホテルの努力もあって、この日程にやっと落ち着いたのでありました。

 26日の夕食が準備されなかったことですが、ぶっちゃけた話になりますけど会計的なことが引き合わなかったからです。パーティーに予算をつぎ込みますから、二日目を同じ場所で同じメンバーだとどうしても品祖に見えてしまう。それにアルコールの代金をどうするかというような問題もありまして。ちなみに飲み放題を付けるとパーティーに近い金額が提示されたらしいです。
 10周年の時には二日目の夕食も用意はされていたのですけど、普通に一般提供されている定食でした。そしてアルコールはなしということだったので、普通ならクロークに預ける荷物の中へ財布を入れてしまうところをこの時だけは持ち出しておいて、現金払いでビールを注文していた一角に私がいたことはいうまでもありません。まぁこの時のホテルは和室もたくさんあって、二次会がやりたい放題だったのではありますけど。
 それでお茶の水という立地条件なので、「東京三作を楽しんできてください」というキャッチフレーズになりました。それぞれの地方組織であらかじめ夕食プランは用意してきていたみたいです。滋賀漢方鍼医会ではお茶の水から遠くないので江島杉山神社へお参りをしてから、両国なのでちゃんこ鍋をというツアーを私が企画して、ついでに漏れている人がいるだろうからとメールでの公募もしました。数名の方を救出しつつ、飲み放題三時間というハードな宴会をやってきたので、これはまた別にも取り上げます。

 漢方鍼医会20周年記念大会と第18回夏季学術研修会レポートの第一弾は、ここまでとさせて頂きます。どこまで報告されるのか・・・?