『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

鍼灸院の二度目のリニューアル、その1、駐車場を拡張

駐車場の全景写真

 それは2013年の3月末日に、突然の衝撃で始まりました。

 それまで「にき鍼灸院」には四台分の駐車場があったのですけど、治療室には五台のベッドがあり、車社会ですから予約制ですが来院して頂いたのに鍼灸院の横では駐車していただけないことがしばしば発生していました。
 23歳で開業した時には「こんなに大きな建物と駐車場はリスクが高い」と地域の先輩にはいわれたものですし、出身の盲学校からも「鍼灸専門では続かないから按摩・マッサージ・指圧も出来るような形を」と強くいわれたものです。しかし、賃貸物件から治療室を始めるのではありませんから建物は一度きりのものであり、待合室と治療室のどちらからも入れるトイレと二十畳の治療室の基本設計は私がしたものです。建物のその他については親父と設計士さんに任せていたわけですが、電動ベッドも最初に四台揃えており三台の同時稼働からスタートさせられたのは、これは下積み修行をさせてもらった経験値が一番大きかったと思います。本当に師匠や研修会の先輩諸氏には、感謝ばかりです。

 三年目には助手を入れられるまでにご支援を頂けるようになっていたのですが、色々とトラブルが重なり一人目の助手が入ったのは六年目でした。ところが、一年経過しない間に二人目も入ることとなり、治療室の拡張準備は出来ていたのでこの時にベッドを五台に増やしたのでした。
 助手が入るのと同時にすぐ近所に大型ショッピングモールがオープンし、「少し時間をつぶしてきます」という付き添いの方がとても多くなりました。それとは別にすぐ横にはパチンコ屋があり、ここも広大な駐車場を持っていました。やがてパチンコ屋は移転とともに閉店したのですが、ずっと駐車場だけは残っていたので、人の土地を当てにして仕事をしていたわけではないのですけどベッドの数よりも駐車場の数が少なくても何とか駐車はしてもらえていました。
 しかし、いつまでも他人のふんどしで相撲がとり続けられるほど世間は甘くなく、広大な元パチンコ屋の敷地は、住宅展示場として新たにオープンすることが2013年になってから発表されました。2012年から建物の取り壊しが始まっていたので、これは莫大な撤去費用を計算すれば固定資産税対策だけでないことは明白だったのですけど、土地というものは自分の都合だけではどうにも動かせないものでありタイミングが一番大切だとは分かっていたのですけど、後で大慌てになるのであります。

 「にき鍼灸院」の位置する大きな道路からは少し奥まった住宅街は、元々が建て売り住宅での一角です。昭和30年代後半に建築された建て売り住宅ですから、当時のものが残っているのは一番奥と一つ手前のアパートを除いては鍼灸院の横にあるもう居住しておられない建物だけになっていました。
 ベッドの数の方が多いのですから常に患者さんの方が駐車スペースを心配されていた状態だったので、駐車場を新たに確保するとしたなら元パチンコ屋の一角を賃貸してもらうか、鍼灸院の横を拡張させてもらうしかありませんでした。居住されていないのですから銀行を通じてなどしながら何度か譲渡をお隣さんに打診はしてみたのですが、倉庫として利用しているので譲れないという返事だけでした。

 しかし、住宅展示場がオープンするという情報から、次に工事の説明があったのは3月も末になってからのことです。工事の開始は4月になればすぐであり、不意打ちの感じさえしました。しかも、今まで元パチンコ屋の駐車場を横切ることが出来ていたのですがフェンスで境界線が立体となり、お隣さんも自営の工場をされているので業者のトラックが入ってきた時に数時間自動車を逃がさせてもらっていたスペースがなくなってしまうという「お互いに困りましたね」という展開になりました。もちろん鍼灸院も、駐車場の第数以上には予約が取れないという状態に追い込まれました。むしろ自動車の入れ替え時間を考慮すると、一時間に四つの予約枠でも多すぎるくらいです。
 それで居住されていない建物を撤去するしかスペースの確保は出来ないと言う点で、お隣さんと利害関係は一致しました。そこで鍼灸という仕事に対する情熱をアピールするという形で、「この際ですから譲渡をしてもらえないでしょうか」と私から先制攻撃を仕掛けさせてもらいました。お隣さんとしては親からの財産であり、自分たちの育ってきた家なので愛着もありますから手放すことに難色を示されたものの、毎朝のように出勤時間に合わせて道路で待っておりアピールを繰り返した結果、話し合いに応じてもらえることとなりました。口約束だけでは不安なので、非公式ですけど押印をした覚え書き書をすぐ交換しましたね。

 話し合いをするとなれば、まず費用の概算を算出せねばなりません。土地を売買する時には新地での価格を基準としており、まだ建物が残っている場合には撤去費用を差し引いての価格となりますから、工務店に相談をして、まずは建物の撤去費用の見積もりを取ります。同時に土地の評価価格についても概算の資料をもらいました。駐車場拡張のための設計や費用については、その時にも一応の相談はしましたけど、具体的なことは後からでした。それから司法書士事務所へも連絡をして、土地の評価価格の資料とともに登記に関する費用の概算を聞きました。
 これらの資料が調ったところで、少し冷却期間もおきながら具体的な話し合いを二度行ったのですけど、一度目は客観的事実から脉診の訓練をで報告しているオランダからの見学者があった日と重なっていたので、仕事そのものと合わせて忘れられない長い一日でしたね。ついでにこの日は次男が幼稚園へ入園もしており、あまりに疲れすぎて一人で飲みに出かけていたのですけど道を間違えていてトラックの運転手さんにドアのところまで案内してもらうという「落ち」を付けてしまいました。
 二度目は二日後で、この日の朝には淡路島で大地震が発生し、一人で奮闘してくれている助手さえも出勤できないかも知れないという事件が発生していたりもしました。お隣さんのことですから価格面では評価価格よりも高くなることを覚悟していましたが、価格以外の条件としては、境界線は設けるもののお隣さんの駐車場も広くできるように何らかの考慮をすることと、工事も登記も全ての手続きを私の側で手配して欲しいとのことでした。身内の不用意な発言で交渉が少し不利になっていたのですが、気持ちが切れないうちに背負える金額だったので合意をしました。今回もまたすぐ押印をした覚え書き書を交換したのですけど、コピーをするのに手間取っている間に土曜日の午後ですから小児鍼が多く予約の方も早めに来院されてきますから、待合室も事務スペースも大混雑でどうやって時間の遅れを取り戻させたのか全く覚えていません。ついでに次男がお友達と脱走をしてきていて鍼灸院の二階に隠れていて大騒ぎになっていましたし、夜には子供と助手を連れて祝賀の意味でお好み焼きを食べてから神社のお祭りを見るつもりが、春祭りは先週に終わっていたという「落ち」を、また付けてしまいました。

 工事をするためには、まず境界線の確定をさせねばなりません。これは司法書士に頼んで測量をしてもらい、概ねのところが出せたなら、それぞれの地権者に立ち会ってもらっての確認作業となります。自動車の入ってくる生活道路が公道ではなく固定資産税のかかっていない私有地だったので、ここの地権者との確認作業が難航するだろうと思われていたのですけど運良くゴールデンウィークに立ち会ってもらえました。この時には工務店も来てくれていたので、お隣さんの駐車場が作りやすいように当初予定の線よりも40cm近く鍼灸院側へずらせることにしたのですけど、合わせて予定に入っていなかったブロック塀で境界線を立体的に区切ってしまい、次の世代に負担を残さないようにとも決めました。
 生活道路と反対側には企業の工場があるのですけど、こことのブロック塀については所有者がハッキリしていたもののやはり確認が必要であり、この立ち会い確認がなかなか日程が合わず早く工事開始になって欲しい側としてはちょっとイライラする時間帯がありました。

 地権者間の立ち会い確認が済んだなら、正式な境界線確定の測量と行政への届け出を司法書士に行ってもらい、通常であれば登記が済んでから次の段階となります。しかし、今回は建物を建築するのではないので建築許可は不要ですから、「早く駐車場を拡張しないと仕事に差し支えているので」という地権者間の合意があるので正式測量が済んだ段階からすぐ工事に入ってもらいました。
 二日や三日で工事が完了するなら思い切って仕事を休んだのですけど、さすがに建物を撤去してから土地をならして現在のアスファルトをめくってから融雪用の水道を埋設するという手順があるので、鍼灸院はそのまま仕事が続けられることを前提に工事日程を組んでもらいました。そして鍼灸院は水曜日の午後は急信なので、この時間は多いに活用してもらうことにしました。毎日の小さなトピックは臨床雑感あれこれ 2013年5月アーカイブ臨床雑感あれこれ 2013年6月アーカイブに他の治療室の話題とともに記録を残してあります。

 
 さて、外回りの改良は工事をしてもらわねばできないことであり、よほどの不具合があるかこのようなやり換えの時でないとできないものなので、以前から改良をしたいと温めていたアイデアを盛り込めるだけ盛り込みました。まずは前述のように、融雪用の水道を埋設したこと。これは以前からも車止め部分にはホースを常設できるようにしてあったのですけど、水道との接続にはもう一つのホースを出してこねばならず、露出のホースだったのでアスファルトの凸凹以上に融雪の効率を落としていました。
 それから融雪のために傾斜をさせていたのですが、これが大げさな傾斜だったのでできる限り角度を緩めました。ちょうど専門家の患者さんが来院されていたので話を聞いてみると、融雪のために水を流すのでも2%の傾斜があれば充分とのことであり1mで2cmの傾斜があれば大丈夫という計算になります。軽自動車ならアクセルを踏み込み直さないと上れないほどの傾斜でしたから、バックで駐車されない人の方が圧倒的だったというのは今さらながら納得しました。開業当時の業者、親父からの指示だったとはいいながらも目に余るほどの大げさすぎる傾斜だったのですから、どうして利用者の立場で提言をしてくれなかったの?と、これも今さらながら思います。開業目前で完成した建物全体を眺めた時、私の見えない目でさえもバランスがとても悪く不細工だと思っていましたからね。本当に患者さんには、迷惑だったことでしょう。
 でも、低くした傾斜なのですけど実はもっと低くできたはずだったのです。これは下水管が埋設されているのですけど元々の傾斜が高すぎたために建物から出してきた時にそこまで深く埋設していなかったので、この下水管に引き上げられる形で理想値ほどには低くできなかったのです。足の不自由な方でも不安を感じない程度の傾斜までは出来ましたから、ここは仕方ないでしょう。

 それから長年心苦しく思っていたのですけど、やっと駐輪場を玄関階段の横に設置することができました。
 、開業時は自動車での来院にばかり目が向いていたので、二輪で来院されることを全く考慮していませんでした。お断りしておきますがこれはトイレと治療室以外の設計を担当した親父の偏った発想であり、慌てて屋根付き部分を設けたのですけど駐車場の一番遠い場所にしか設置できなかったのです。それも背が低すぎてワゴン車が屋根をこすってしまうという事故が発生したのでカーポートへは作り替えたものの、今度は積雪が多いと足が折れてしまう心配が発生してきて、雪の降る日には使えないというほとんど意味のない状態でした。
 ちょうど待合室の出窓のところには生け垣があったのでこれを撤去してしまい、屋根も敷設して駐輪場を作りました。屋根はカーポートのような半透明のものを採用したのですけど、少し色の濃いものにしたことで夏場の待合室が涼しくなるという副産物ももたらしてくれました。何よりも二輪で来院される方の便利がよくなり、二輪を利用される方が多くなりました。

 広くなった分だけ角に自動車をぶつけてしまう事故も多くなりそうでしたから、これには一般道路に立っているサインポールを鍼灸院の建物横に置きました。ブロック塀には蛍光塗料も付いているゴムの標識も巻き付けました。
 同じ工務店の工事でお隣さんにもアスファルトが同時に敷設され、一部は縦列駐車ですけど三台の自動車がおけるようになって、今までの半分路上駐車状態が解消され、生活道路の通行もとてもスッキリしました。
 、鍼灸院の駐車場も広げた部分には縦列駐車であれば奥に三台余分にまだ駐車できるのですけど、これはどのようにして活用できるのかまだ試行錯誤の段階です。今回の拡張で、唯一宿題となった部分ですね。

 傾斜が低く250cmと一台分の幅も十分に確保したので、「とても駐車しやすくなった」という患者さんが圧倒的です。六台同時に注射できるので「今まで空いているかいつも心配していたが安心」という患者さんも多く、本当にご迷惑をお掛けしていたのだと改めて反省もしています。また四台と六台では入れ替えが必要な時でも効率がかなり違うので、予約が詰まっていてもこちらとしても安心をしています。
 写真は生活道路側から駐車場全体を眺めたものであり、左側に鍼灸院の建物があり、右側には奥の駐車場も見えています。「にき鍼灸院」見学ツアーその1、駐車場と玄関では、色々な角度からの写真に加えてビデオもご覧頂けます。こちらも閲覧いただければ幸いです。