『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

格安iPhone導入奮戦記

 かつて、「院長ブログ」では鍼灸とは直接関係のない低価格でのモバイルルータ導入に成功、しかもLTEですという記事を投稿しているのですが、今回はその延長線上で格安simを用いてのiPhone導入に成功した報告です。視覚障害者がiPhoneを・IOSバイスを使うということについても付記しておきました。

 モバイルルータを導入したなら「ネット環境が外でも自由に使えるのはこんなに便利なものなのか」と、特にノートパソコンを外でネット接続できる便利さは手放せないものになってしまいました。これは仕事上で本当に大きな武器となり、東京の本部会へ向かう新幹線の中では必ず打ち込みからアップロードという作業をしていますし、子供の付き添いで公園へ出かける時にも必ずノートパソコン持参ということになりました。
 ところが、メインで考えていたiPod touch第四世代は期待通りの便利さだったのですけど、世代が古くなってしまいIOS6.1.4でアップデートが終了となりましたし、ボイスオーバーを使うと動きがやはりもっさりになってしまいます。ボイスオーバーというのはIOSに最初から内蔵されているアクセシビリティ機能の中でも視覚を補助する画面読み上げ機能のことで、スクリーンリーダーのことです。必ずしもアイコンの上にタッチする指が乗っていなくても、フォーカスを定めるボイスオーバーカーソルが表示されていて画面を全く見なくても操作できるようになっています。それだけに画面を音声化させるためのボイスオーバーカーソルの動きが加わることと音声発生のための処理が必要なため、動きがどうしても遅くなってしまいます。ちなみにIOS6以上での音声エージェント"siri"と同等の音声発生だと思ってもらえれば、とりあえず間違いはないでしょう。IOS7からはsiriで「ボイスオーバー音」と指示すればスクリーンリーダーモードへ入れます。「ボイスオーバーオフ」で抜けられます。
 ボイスオーバーを標準として使っているならホームボタンのトリプルクリックでオン・オフを切り替えるのですけど、通常操作と異なってくるボイスオーバーのジェスチャについては様々なブログで紹介されてはいますがiPhone の VoiceOver を使ってみよう! - Qiitaあたりが全く知らなかったという人には読みやすいでしょう。

 そしてiPhoneへ乗り換えを決意させたのは、様々な視覚障害者を支援してくれるアプリの存在でした。例えばLookTelマネーリーダーという紙幣識別アプリの読み取り制度は海外紙幣も含めて抜群であり、日本のお札ならよほど古くなければ触覚訓練のできているし確証会社なら判別できるものの、何度か「これはお札?」というものを出かけたことのある韓国のウォンも含めて識別してもらいました。TapTapSee - 視覚障害者向け画像認識カメラは風景などを説明してくれるので感動さえしました。電車のドアが内側は何色をしていようと乗車できればいいのですけど、風景が分かると滋賀県のローカル線に乗るだけでも旅行気分にさせてもらいました。それに子供が何色の服を着ているのかなど気にしたこともなかったのですけど、娘と服のことについて話をするなんて考えもしていませんでした。今まで鍼灸院の置物が何であるのか知らないものもありましたし、ノートパソコンの色も知らなかったのです。この手の識別アプリは他にもいくつかあるのですけど、本当に重宝させてもらっています。

 こうなるとIOSバイスは外出時に必需品となるのですけど、次に使いたくなったのがBlindSquareなどの視覚障害者向け徒歩ナビアプリです。標準で提供されているマップも最近はカーナビモードだけでなく徒歩ナビモードも装備するようになってきているのですけど、視覚障害者向けというのですからかゆいところに手が届いているという評判なのでwifi環境でもそれなりに動作するということですからiPod touchへインストールしてみると、有料ソフトですけど目的地のシミュレーションをするだけでも充分に価値がありました。
 もうこうなると買い換える次のIOSバイスは、GPSが搭載されていてモバイル通信も一体化されているiPhoneしか選択肢がありませんというか、選択をしない方がおかしいというのが私の使い方になっていました。
 けれどモバイルルータを導入した時にも書いたように、私は年間90%以上を無線LAN環境の中で過ごしているのであり、携帯電話でさえ通常は無料通話分で納まっているような状況です。そこへ通話し放題が強引にセットされて各種割引を適応させても6000円以上もするキャリア版iPhoneを追加するのは、それもLineがやりたいだけの副院長の分まで加算すると非常に大きな負担です。うーん、このままでは贅沢品も贅沢品で手が出せない。

 それならモバイルルータの時と同じくMVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体通信事業者)を活用してiPhoneを運用することはできないのか?と下調べを始めました。3GS,4,4Sは主に香港から輸入してきたsimフリーだと動いているという報告がありました。5からはsimカードのサイズがnanoへと変更されたのですけど、MVNOの各業者は対応をしています。ということは、simフリーなら動作可能でありLTEにも対応できるということです。
 そこへ遂にNTT docomoが5Sと5Cから取り扱いを始めました。モバイルルータの回線を乗り換えていたIIJからも音声通話機能付きSIM(みおふぉん) IIJmioで音声通話のできるsimの取り扱いが2014年の春から開始され、MNP(Mobile Number Portability=携帯電話事業者間での番号ポータビリティ)にも対応していることを知りました。動作報告を見てみると、simフリーだけでなくdocomo端末でも動作しているとありますからモバイルルータ導入と壁は同じだと判断できました。つまり、ターゲットはdocomo端末であり、単体発売はないので状態のいい中古を狙うことにしました。
 副院長も同時にiPhoneへ乗り換えれば、IOSバイス間での通話が可能なフェイスタイムオーディオが活用できるのであり、このフェイスタイムオーディオはネット経由なので通話が無料の上に音質がよく電話と同じ動作をするので今まで通りトランシーバーのような気軽な連絡ができます。キャリアメールは捨てなければなりませんが、フリーメールだと追加料金の発生がありません。IP電話も別用途で既に活用していたので、これも計算に入れるなら二人が同時にiPhoneへ乗り換えると通信費はさらに大幅な削減となります。
 それでいてIOS8からはテザリング設定も簡単になるという情報だったので、パソコンを外出先でも同じように活用できそうです。第20回夏季研滋賀大会(中編)、実技決定と事務処理についてという大変な事業を行っている中だったのですけど、下調べをすることがストレス解消になるので時間を作っては検索をしていました。

 端末購入の狙い目は、iPhone6,6plusが発売されて一ヶ月後くらいと決めていました。6へ乗り換えた短期間の5Sユーザーはキャリアの下取りではなくより高額な中古端末業者へ売却するだろうと予想したからです。一代目は大当たりで、新古品が35800円でゲットできました。二代目は購入を焦ってしまい、同じく35800円であったのですけど、ホームボタンに接着剤で飾りが付けてあるのを写真を見てもらっても判別できなかったので(ということにもう今はしておきましょう)、アップルで端末交換をしてもらいましたから追加に30000円の出費となりました。二台で10万円と少し、一台分だと5万円程度にはなってしまいましたけど、どちらも32MBモデルなのでsimフリーよりもかなりやすく購入はできました。
 実は端末をネットで探し出して購入するまでが、一番疲れた作業です。次の買い換えでは、せめて京都でも出かけて実際に品物を見て説明も聞いてでないと購入しないと思います。けれど三年後にはsimロックが解除された端末が多く市場へ出回っているはずであり、ロック解除がされていなくても「白ロム」と呼ばれている残債の残っていない端末で品物がよければ、ハードな使い方をしない人には「あり」の選択肢かも知れません。くれぐれも自己責任であり、残債ありのままの超格安の「赤ロム」は手を出さない方がいいとは思います。

 端末購入の手続きができたなら、次はMNPでのsimカードを調達しました。モバイルルータで使ってきたカードへ上書きしてもらえないかと調べたのですが、データ通信専用でも個別の電話番号が割り当てられているので無理でしたから、ここは事務手数料が必要になりましたけど新規申し込みで電話番号を持ち込むことになりました。副院長はIIJを初めての理容なので、会員登録に手間が掛かりました。
 最初の手続きは今までの業者へMNP予約番号をもらうことで、制度ですからオペレーターは対応をしてくれるものの実質的には解約手続きなのですから、長く長く説明をされて引き留め作戦を振り払わねばなりません。ショップで全ての手続きを代行してもらうと、このやり取りが省略できるのですけどね、うーん、自己調達はこんなところにも障壁がありました。
 simカードの申し込みはネット上での作業ですから、一部スクリーンリーダーで操作できなかった箇所を除いては、問題ありませんでした。でも、こちらも説明が長くてなかなか最終段階に到達できなかったのですけど・・・。そして本人確認のための画像アップロードがあり、ここは助手にデジカメで画像の撮影をしてもらいました。自動車運転免許を持っていれば問題ないのですけど、身体障害者手帳が確認書類のリストにあったのでこれが利用できたのは、ある意味でラッキー!

 MNPでの切り替えが完了すると新しいカードが到着するまで携帯電話そのものの理容ができなくなってしまうのですが、ここも心配していたほどではなく連絡メールが入ってから丸一日だけ我慢していれば宅急便で次の朝にカードが到着していました。iPhoneに付属していたピンを本体の穴へ押し込んでカードトレイを取りだし、simカードをトレイにセットして本体へ戻せば、アンテナピクトも表示されて数秒で通話ができるようになりました。ここはあっさりしすぎなくらい、すぐ終わった作業です。
 時間が少し戻って、simカードが到着する前にデータ通信をする準備も完了させておきます。院長の場合はパソコンのiTunesからiPod touchの設定を復元させたのでアプリも含めてwifi環境なら既に活用をしていましたし、副院長の分はアップルIDの取得からやったのですけどwifiさえ先に接続してしまえばフリーメールを持っていると何ら不自由はありません。IIJmio 高速モバイル-D iOS APN構成プロファイルからファイルをパソコンでダウンロードしてメールの添付ファイルで自分宛へ送付し、その添付ファイルをだぶるタップしていけば手動入力不要でインストールが完了しました。simカードを装着して数分間で自動的に接続されましたから、ここもあっさりしすぎなくらいでした。

 ただし、中古業者の対応によるのですが全くの新しいiPhone端末として出荷されているとアクティベートにはsimカードの装着が必須なので、通信可能なsimカードの到着を待たねばなりません。もしくはアクティベート用のダミーカードをベット調達して、wifi環境から準備をしておくことになります。
 あっそうそう、アクティベートさえできていればこれはどのタイミングでも構わないのですが、それまでの携帯端末からiPhoneへ電話帳をコピーしておく必要があります。ショップへ足を運べば端末があるので自ら操作することもできるらしいですし一度きりのことなので店員さんにお願いしても大丈夫でしょう。後は自分で連絡先のバックアップを取っておくことです。それからキャリアメールから新しいメールアドレスへの変更の連絡も。これも一度きりのことなので、ちょっとしんどいですが事前に行っておいた方が無難でしょう。

 これで格安iPhoneへの乗り換え奮戦記は終わりです。一番怖かったのはMNPsimカードは書き換えたが通話不能だったというトラブルでしたけど、これはデータ通信とは別物なので大丈夫のようです。しかし、AU系列のMVNOではIOS8になってデータ通信ができないというトラブルが発生しているように、アップデートが実施された時にすぐ飛びつかずメーカーやその他のブログ記事からのレポートを待つようにしています。アップデートだけ慎重にしておけば、キャリア版と何ら変わらず動作してくれています。
追記:AU系のMVNOでも、公式アナウンスはなく実験的段階のようですがIOS9と一部のiPhoneではデータ通信が可能になったという報告が出てきています。

 実際に乗り換えての感想ですけど、「なんでもっと早くiPhoneにしておかなかったのだろう」という暗い、便利で使い勝手があり楽しいです。まさに「使っていて楽しい端末」であり、頼もしい視覚障害者のアイテムでもあります。モバイル通信の準備をしなくてもすぐアプリが通信させられるのであり、GPSの精度も期待以上に高かったのでいつか本当に知らない場所を一人で歩いてみたいと思っています。
 夏まで携帯電話とモバイルルータとiPod touchの三つをセットにして持ち歩いていてそれはそれで便利な面があったのですけど、そこへモバイルバッテリーが必要になってきているとさすがに大荷物でしたが、複数へ充電をしなければならない件も含めてこれも解消しています。テザリングを開始させるのに少しコツが必要ですけど、こちらもバッチリ使えています。格安通話アプリとIP電話にフェイスタイムを組み合わせているので、Lineやスカイプを使わなくても月額の維持費は基本料と通話を合わせても2000円程度です。副院長の場合は、維持費が半分になりました。最初に一喝で端末購入をする必要はありましたけど一年で元が取れるのであり、二年ごとに買い換えたとしても今後はおつりが沢山でてきます。simカードを交換する必要も今後はありませんし、乗り換えでもitunesからバックアップと復元を利用すれば手間はほとんどありません。
 唯一困るのが子供が手軽になりすぎて外でも動画を見たがることで、動画は大食らいですからすぐデータ量がなくなってしまうんですよねぇ。