『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

スクリーンリーダーでやってみました、Windows10へのアップグレード

 今回の院長ブログは、時々脱線しているパソコンやIOS機器や家電製品ネタになります。視覚障害者が自力でWindows10へアップグレードする方法とその使い勝手、そしてチューニングのポイントについて簡単にまとめました。

 どこでもささやかれている言葉であり、特に視覚障害者でスクリーンリーダーによってパソコンを活用しているユーザーにとっては、WindowsXPが最も使いやすかったOSでした。一般的な利用者レベルでもパソコンの構造がそれなりに理解できて突然のクラッシュがないということでは、Windows98から飛躍的な進歩であり、一般ユーザーでは難しかった周辺機器のドライバインストールもかなり簡単になりましたし、無線LaNでのインターネット接続をさせても不満のあるレベルではありませんでした。何よりWindowsの特徴はスタートメニューが存在していることであり、Windows95/98のクラシックスタイルを選択することができましたし、標準の2ペインのスタートメニューにしてもWindowsキーを押してから下矢印一回でインターネット接続「ブラウザ起動」ができたり、下矢印二回でメールソフトへアクセスできたりと、何も勉強をしなくてもその日からパソコンが使えました。
 しかし、その後はまだOSを販売することがビジネスになっていた時代であり、インターネットの発達だけでなくウィルスの脅威からセキュリティを強化せねばならないために、インターフェイスがどんどん複雑になっています。vistaから導入されたUACというインストール時に現れてくる確認画面なのですが、単なる許可設定ではパソコンの前から離れている隙に第三者がソフトをインストールできてしまうのであり、ここはスマートフォンのようなパスコードや指紋認証に変更しないと本当の意味はないと思います。それからMacOSとの決定的違いだったはずのスタートメニューがどんどん使いづらくなり、何を勘違いしたのかWindows8での廃止はユーザーからの大批判を浴びました。ほかのOSでもそうですがテスト段階ではパワーユーザーのみが使って検証をするため、一番使うべきあまりパソコンに詳しくないユーザーの意見が反映されなかったという例でしょうね。
 しかし、今回のWindows10はOSはサービスの一部ということで期限付きながらも無償アップグレードが実施され、他社がなしえなかったモバイルやタブレットだけでなく組み込み系までとの統合を果たしたということで、地道な研究成果が結集されたものだといろいろなメディアで評価されています。実際に他社はベンチャー企業を買収し統合することによって大幅な機能アップを遂げてきたのに対して自社開発で追いついてきたのですから、実力はかなりのものです(と評論されていますし、この点で批判的な記事を見たことがありません)。マイクロソフトの言葉を信じればですが今後メジャーアップはされないということならサポート期限の心配もないはずで、アップグレードを拒否する理由はどこにもないだろうということでやってみました。タイムリミットまで使い慣れた環境を維持するのも選択肢の一つですけど、XPほどこだわりがなかったのでアップグレードに踏み切ったという程度だったのですが、使い始めてみると意外にもXPの時のような楽しさが久しぶりに戻ってきた感触があります。

 Windows10 手順 アップグレード」などのキーワードで検索すれば実況中継風のブログがいくつもヒットしてきますから詳細はそちらへ譲るとして、2016年2月現在ですけどアップグレード開始から半年経過していち早く報告してくれている記事よりもずっとスムーズにアップグレードできると実感しました。あれこれ注意事項が書かれていますけど、Windows7,8.1が現在稼働しているパソコンならまず問題はないでしょう。実際に私が一番目に試したのはパナソニックレッツノートW8というモデルで、発売は2008年のvistaモデルでありXPへダウングレードして使っていた中古品です。2014年のサポート気化が残っていた時期はXPの新規入手が困難だったのでネットで中古品を探したのですけど、メモリが2GBへ増強されていたのでサポート期間終了後にはDSP版のWindows8.1update1でも32bit版を購入して、Windows XP が載っていた Let's note に Windows 8 をインストール - arbk-worksを参考にクリーンインストールをやり直していたものです。ここへReadyBoost でメモリが少ないPCを快適に - arbk-worksも見て、8GBのSDカードを追加校に有するだけで高速化もできました。VDMW800を組み込んで使っていても、ストレスなく動作していました。

 さてアップグレードは、パナソニック独自のユーティリティがハードの制御上必要なのでWindows8.1からソフトを全て引き継ぐ形で次のようにしました。Windowsキー+Bでタスクバーへフォーカスを移動させ、右矢印で「Windows10を入手する」でエンターすれば、この画面だけPCトーカー8.3では同じ箇所を何度も読み上げて「今すぐアップグレード開始」のリンクがなかなか出てこずちょっと根気が必要でしたが、リンクをエンターすればWindowsUpdateが起動をしてデータのダウンロードが始まります。4GBから6GBあるらしいのですが、最適なものがダウンロードされるということでうちの光回線でこのときには一時間弱でした。ダウンロードが完了すると許諾書への同意画面が現れるので「同意」でエンターし、ここはスペースキーでしかボタンが反応しないのですけど「今すぐ再起動」を選ぶとインストール開始となります。ここからは自動的に何度か再起動のプロセスをしながら一時間程度書き換え作業にかかっていました。
 しばらく放置状態でしたが、気がつけばハードディスクの回転音がしていません。ここは初期設定画面なのです。Windowsキー+エンターキー(Windowsキーを押しながらエンターキーも同時に押すという表現です)でOSに最初から内蔵されているスクリーンリーダーの“ナレーターを起動させます。スクリーンリーダーモードにさえなってくれれば、画面を晴眼者に見てもらうことなく完全に自力でセットアップ作業が続行できます。前環境でマイクロソフトアカウントにログインもしくはローカルアカウントでログインしていたはずですから、「次へ」を選び続けていけば初期設定は完了します。ちなみに音声での確認が途中ではできないということで不安に思われるでしょうが、何度目かの再起動後にはWindows+エンターでナレーターの起動はできるようです。携帯電話の機能まで吹き飛んでしまわないかと心配になるiPhoneのソフト更新作業よりずっと心臓への負担は少ないでしょう(笑い)。
 「PCトーカー8.3を組み込みました」という音声が自動的に流れてきたので、これは驚きました。PCトーカー10に入れ替えるまではNVDAを使うつもりでしたし、フォーカストークの体験版も入れていたのですから、「なんじゃこれ?」という感じです。詳しくまではわかりませんけど、Windowsのバージョンごとにカスタマイズされているようですが昨年のバージョンアップは本体エンジンが共通のようですから、交換パッケージが届くまで支障なくそのまま使い続けられました。パソコン本体を再起動をすると「このバージョンは正式対応ではありませんサポートもありません」という警告をしてからPCトーカーが起動していましたからね。

 ということで、PCトーカーのマイスターとメニューがそのまま起動していましたから「マイクロソフト本家が復活させたスタートメニューとはどんなもんじゃい?」と楽しみにしていたのですけど、とりあえず今まで使ってきたソフトが支障なく動作するかのテストがしばらく優先だったので、「本当にWindows10を使っているのだろうか?」という感じでした。ソフトはそのまま動きますしパナソニック独自のユーティリティも大丈夫でした。Windows8.1からだと、全く違和感がないというのが私の実感です。
 初めて違いに戸惑ったのはWindowsキー+Eでエクスプローラを呼び出したとき、ハードディスクなどドライブ類が見当たらなかったときでした。クイックアクセスというものに変更されていて、ダウンロードやドキュメントとかミュージックなど頻繁に使うフォルダがピン留めされているウィンドウを呼び出しているのでした。下の方には最近使った書類も、自動的に表示されます。個人的にはディスク類への不用意なアクセスを防いでくれますからこの方が使いやすいです。
 クイックアクセスからディスク類を参照するには、一度バックスペースを押してPCという項目を探しエンターすれば見つけられます。もしくはWindowsキー+Xで高度なコンテキストメニューを呼び出し、ここのエクスプローラでエンターすれば従来と同じものが表示されてきます(後述するクラシックシェルを用いてクラシックスタートメニューにしておくと、従来のエクスプローラがより簡単に呼び出せます)。
 アップグレードをしたパソコンならすでにスクリーンリーダー向けのカスタマイズがなされているでしょうけど、それでもインターネットエクスプローラを標準ブラウザに変更しておかねばならないなどWindows10固有の設定がいくつか必要でしょう。ここは矢野氏の音声ユーザー(視覚障害者)のための Windows 10 の設定と操作 入口のページ - 初心者の 初心者による 初心者のための音声パソコン小技集に詳しくありますし、いくつも参考にさせていただきました。

 私が加えている駆風といえば、前述のReadyBoostを設定していることです。ところが最初、せっかく16GBのSDカードに増強して装着し直していたのですけど「どうも時々かくかくする状態がまた出てるなぁ」と思ってSDカードのプロパティを調べると、ReadyBoostとして動作していません。再テストのボタンがあったのですけど「このメディアは十分な速度がない」と出てしまいます。性能はクラス4を確認して購入しているのに「なんでやねん」です。苦し紛れに以前使っていた8GBのカードへ差し替えてみると、こちらはすぐ認識をしてくれました。Windows10はReadyBoostとの相性がよくなっている感じで、同じパソコンなのに動作がXPや8.1時代より明らかに速くなっています。特に感じるのはブラウザの描画だけでなく各種ウィンドウを開いたときの反応が早くなったことです。
 ちなみにマイクロソフトの公式アナウンスでは搭載メモリの二倍以上からとなっていますが、三倍はメモリカードの容量があった方がいいとされています。フォーマットはもちろんexfatに変更です。それから後日談ですけど、SDカードをクイックではなく完全フォーマットでやり直したところ、今度は転送速度がという表示が出なくなりました。

 「マイクロソフト本家がどんなスタートメニューを復活させたんかいな?」と興味津々だったので、マイスターとメニューを終了させて試してみました。Windows10の記事の中ではOS性能についての批判的記事はないものの、使い勝手については設定とコントロールパネルの二つが存在していることと並んで評判が今ひとつだったとおり、重たい上にキーボードからの操作に癖があるので使いやすいとはとてもいえない代物でした。最近使ったプログラムには任意のものが登録できませんし、右矢印を押してしまうとモダンUIのタイルメニューが出てきてしまいます。巨大なスタートメニューになっているのですから、そりゃ重たいわけです。右矢印キーを押すとタイルが出現するということはプログラムメニューへ入るときにもエンターが必要となり、しかも困ったことにアルファベットのキーを押すとその頭文字のところへ飛んでくれるという機能が働きません。ページダウンである程度は素早く動けるものの、深い階層で登録されているプログラムだとエンターを何度も押さねばならず呼び出すのがとても大変です。
 これでは本家には長くつきあっていられませんし、マイスターとメニューはわかりやすいのですけど何を一服しているのか反応の鈍くなることが時々あるので、Windows10にも対応したという話を聞いたフリーソフトのクラシックシェルを入れてみました。

 Classic shell最新版(直リンク)をダウンロードしマイスターとメニューの自動起動をオフにしてからインストールします。英語のソフトですが二つ目の画面で「使用条件に同意する」という意味の“I agree”にスペースキーでチェックを入れる操作が必要なだけで、ほかはエンターをしていくだけで作業は終了です。直後からスタートメニューは日本語で使えます。またja-JP.DLL(直リンク)もダウンロードしてプログラムファイルズのクラシックシェルフォルダへ入れれば、スタートメニューからの設定画面も日本語にできます。
 Windowsキーを押すと、一番最初はスタートメニューの形式を選びます。クラシック・クラシック(2カラム)・Windows7の三つです。これはお好みというところですけど、私はクラシックにしています。あのWindows98のクラシックスタイルそのものですが、コントロールパネルだけでなくPC設定の方へもアクセスできますしモダンUIから呼び出すアプリ類ももちろんプログラムとは別にマウントされます。PCという項目もあり、これは従来のエクスプローラが呼び出されますからクイックアクセスと使い分けるのに便利です。
 さらにカスタマイズということで、まずはできる限り余分なショートカットを削除してしまいます。AOKメニューがあれば一通り呼び出せますからPCトーカー関連のほかのショートカットは削ります。(ただしPCトーカーのショートカットを削除してしまうとキーボードからの再起動ができなくなってしまいますのでご用心を、またデスクトップにあるNVDAのショートカットを削除するとこれもキーボードからは呼び出せなくなってしまいます。)逆にどうしても一発で呼び出したいアプリ、たとえば私はMMエディタを愛用しているのでプログラムのコンテキストメニューから「スタートメニューに表示する(クラシックシェル)」を実行するだけでスタートメニューの上の方へ登録されます。ほかに同じアルファベットがなければ、Windowsキーを押した後この場合だとMを押せばMMエディタが一発起動ということになります。
 それからこのクラシックシェルは最近使ったアプリがいつつ上位に表示されるだけでなく、ファイルの履歴も記録されているので次回はファイルをはめ込んで起動するというランチャーとしての使い方もできます。ワードやエクセルだけでなく住所録ソフトでこれが使えると、本当に便利です。インターネットエクスプローラを別に登録してあるので、見たいページから開始するということもできています。
 アプリの一発起動という点では古典的な手法なのですけど、どのスタートメニューからでもできるのですがプログラムのところでプロパティを出し、ホットキーの登録ができます。オルト+F4はウィンドウを閉じたりアプリの終了で有名なホットキーですけど、このオルトとファンクションの組み合わせは使いやすいです。私は昔からおると+F1でメーラー、オルト+F2でブラウザ、オルト+F3でメモ帳を愛用しています。

 新しいOSに刷新してみての感想ですが、まずはよかった点から。ReadyBoostにも助けられていますけど動作が軽くなっているのはいいですね。クラシックシェルに入れ替えると、さらに体感速度が向上しています。前述しましたが、クイックアクセスも安心して使えます。XP時代のソフトを含め、きちんと動作しての環境移行がスムーズだったのもよかったです。Windowsディフェンダーでファイルの個別スキャンが標準装備になったのも助かっていますし、敢えてサードパーティー製のセキュリティ対策ソフトを導入する必要性を感じません。ということは、動きがものすごく軽いパソコンばかりになるということです。
 よくなかった点ですがXPから8.1へいきなりジャンプしたので、最初はリボンインターフェイスがうっとうしくコントロールパネルもうっとうしく、このあたりは変更がなかったので使いにくいだけですから慣れるしかないでしょう。コントロールパネルと設定の二つが存在するのは、ほとんどが重複しているのでなんとかしてほしいところです。相変わらずシステムレベルでのブルートゥース機器の接続はわかりにくいです(追記:PC設定の「デバイス」に項目があり、BM32とのペアリングをやり直す必要がありました)。そしてスクリーンリーダーの宿命ですが、余分な出費が発生します。また頻繁に更新プログラムが配信されてきているので、スタンバイからではなくシステムを起動させるときには時間が長くかかってしまいます(これも今のところ仕方ないですね)。
 総合的には、今後も持続的に改良されていくOSというところの期待と、ウィルス対策が強化されサポート期限の心配もなさそうだということで動作速度も満足ですからおすすめでしょう。日本語特有の複雑さを処理するにはスクリーンリーーダーを用いて仕事レベルで使えるのはやはりWindowsしか今のところはなく、今後もユニバーサルデザインに気を配っていただければと思います。