『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

Logovista辞書ブラウザでも南山堂医学大事典が活用できました

 まだ私が経絡治療の世界へ足を踏み入れて間がなかった頃、東洋はり医学会初代会長の福島弘道先生が名調子で語られる講義をカセットテープで繰り返し聞いて理論体系を飲み込んでいきました。その中で少し難しい病気のことになると南山堂医学大辞典から調べて話されていました。滋賀県立盲学校の理療科で鍼灸師の資格は取得したのですけどまだ世間知らずの状態ですから、はてさてどんなすごい辞典なんだろうという興味本位で開業して二年目だったと思いますけど少しお金が出せるようになった頃に購入してみました。
 webの説明から一部引用させてもらうと、『南山堂医学大辞典は日本人の手による初の本格的な医学専門辞典として1954年に発刊され、以来60年以上にわたり医学・医療関係者に広く信頼を得る、わが国で最も定評のある総合医学辞典です。ということで、価格もそれなりにしましたけどその大きさと何より重さに驚いてしまいました。「なんじゃこれ漬け物石の代わりにできそう」という感じです。びっくりしたのは五十音の頭がすぐ出せるように、指先がはめ込めるように紙がえぐられて製本されていたのです。信じられます、そんな本があったこと?例えば「ま行」の項目なら、「ま行」用のへこんだ箇所に指先を入れて「よっこらしょっ」と大まかにページを開いて、そこから具体的に探していくのです。しかも、ページ数を稼ぐために薄い薄い紙になっているだけでなく文字も細かくて、当時はまだルーペを使えば雑誌の1ページくらいは活字が読めていたのですけどとても私には自力で読めるものではなく、土曜日だけ事務員のアルバイトに来てもらっていた女の子でさえ二つくらい項目を読み上げると目が痛くなってしまうという代物でした。いろいろな意味ですごい辞典です。

 時代は流れて2000年代に入ると辞書類もデジタルとなり、もう文字を直接読めなくなっていましたけどパソコンのスクリーンリーダーも進化していて一部ですけど読み上げ可能な辞書形式もありました。マイナーでしたが反応速度がいいので95Readerシリーズを愛用していたところ、南山堂医学大辞典のCD-ROM版の第二弾がXPリーダー対応になるアクセシビリティ機能を搭載して発売されるという情報が入ってきました。漬け物石にはせず大切にカルテラックの上にのせていた大辞典ですけど、「やっと思った通りに活用できるぞ」ということですぐ購入しました。
 検索結果のリストビューをスクリーンリーダーが捉えやすい形式にしてあり、本文は自動的にコピーペーストでクリップボードへ送ることによりスクリーンリーダーのクリップボード読み上げ機能で本文閲覧を可能にしていました。クリップボードに本文データがすでにコピーされていますから、聞いただけでは意味のわからない箇所もテキストエディタにデータをペーストすることで一文字ずつ調べることもできるようになり、大いに参考資料として活用できました。2007年には第散弾が発売され、音声データやその他の付属データが充実してさらに活用範囲が広がりました。ちなみにXPリーダー対応は継続され読み上げはスムーズでありましたが、PCトーカー系も自動読み上げはできずファンクションキーの操作が少々面倒ではありましたがクリップボード経由で使える範囲でした。

 さらに時代は流れてWindows8.1や10になっても、XPリーダーは消滅してしまいましたからPCトーカーに乗り換えたのですけどなんと医学大事典がXP時代には操作に手間がかかっていたのに、自動読み上げがスクリーンリーダーの進化からでしょうかいつの間にかできるようになっていました。ところがです。必要に迫られてパソコンのリカバリをして医学大事典も再インストールして動作を確認し、カタカナのままでは素早く呼び出せないのでリネームして動作確認しようとするのですけど起動してくれません。「えっどうして?今まで何も疑わずに使えていたのに」と、ほかのパソコンでも試してみると一度は起動できるのですが二度目からは反応がありません。
 結論としては、もう一度使いたいときにはパソコンそのものを再起動すれば問題ないということがわかり、とりあえずは問題解決です。しかし、状況把握できるまでに相当な時間がかかっており、古いソフトにもなっていたので新バージョンのことも含めて南山堂のサポートへ問題解決の前にメールを出していました。
 南山堂からは「そのバージョンはvistaまでのサポートであり動作保証をしていない」ということで、現在のLogoVista電子辞典シリーズ 南山堂医学系電子辞典のページを紹介されたのですけど、販売チャンネルが移管されているのでスクリーンリーダー対応がこちらではわかりかねるという返答でした。非常に丁寧で今でも使えることを期待しているという、心が和むメールを貰いました。
 続いてLogovistaのサポートへメールを出すと、丁寧な文面ではあったものの他社製品との連携は視野に入っていないから向こうに問い合わせてくれと「わしゃ知らん」のような書き方です。南山堂とのあまりの違いに落胆を通り越して怒りがこみ上げてきました。視覚障害者の技術系メーリングリストで使用者がいるのか質問を流したのですけど回答がなく(かなりあとになって一人現れましたが使いにくいという評価でした)、このままでは引き下がれないと、「東京パラリンピック目前でアクセシビリティユニバーサルデザインが言われる時代にソフトメーカーとしてこういう対応はいかがなものか」とクレームを書いた上で、「でも大人の対応はしたいから購入はするがもし使えなかったなら返金保証をしてほしい」と再びメールを出したところ、貸与をするのでテストランをしてほしいという思いがけない返信がありました。Logovistaさんも大人の対応、ありがたいです(先程の文面大変に失礼でしたけど本当に感じたことなのでここは隠さずに掲載してしまいました、ごめんなさい)。

 では、やっとという感じですがここから具体的な注意点と使い方になります。遅れて報告してもらった人からは、「PCトーカー単体では読み上げが不十分なのでNVDAを併用すれば使うことはできる」ということですから、なんとしてでも使いこなせる操作法を見つけるまで挑戦すると決めて取り掛かりました。試したのはWindows8.1の32ビットとWindows10の1903で64ビット、OSもスクリーンリーダーのPCトーカーとNVDAいずれも最新版にしておきました。
 まずインストールなのですけど、最初に試したのはPCトーカーでありここではその基準で書いています。CD-ROMをドライブにセットしたそのままだとLogovistaカタログというソフトが立ち上がってきてしまうので、全く読み上げができませんからここは強引に手動インストールをさせました。エクスプローラからドライブ名:AutoRun.exeでは前述のソフトが立ち上がってしまうので、探したところドライブ名:\AutoRun\setup.exeというプログラムを見つけられたのでこれを実行するとウィザードが立ち上がり、いつものインストール手順で自力操作ができました。途中でシリアルナンバーを入れる箇所がありますから、ここは目を借りる必要があります。インターネット認証が必要なのですけど、キーボード操作で普通にクリアできます。
 インストールが完了したので付属しているソフトを一通りPCトーカーで試したところ、肝心のLogovista辞書ブラウザ以外は何も喋ってくれませんでした。辞書ブラウザは反応をしているのでいよいよ検索をしてみると、エディットボックスは普通にしゃべるので単語を入れたなら前バージョンと同じだと想定してそのままエンターキーを押すと、検索はされているようです。上下矢印を動かすとリストビューの一番上か一番下になると「最上段」「最下段」の読み上げだけはされました。ここからエンターやタブや矢印など様々なキー操作を試みるのですけど、さっぱり読み上げをしてくれません。そこで情報通りNVDAを追加で立ち上げてみると、リストビューの読み上げがされるようになりますが、時々本文の読み上げができるものの動作がかなり不安定です。
 「やっぱりかなり難しいかなぁ」とため息が出てきたのですけど、ふと「NVDA単独で使えばどうなるのか」と試したなら、これがスムーズに操作できてしまったのです。「えっ!えっ!えっ!」という感じで腰を抜かすほど驚いてしまいました。本当に椅子から転げ落ちそうになり一瞬腰痛が発生してしまいましたからね。

 では、辞書ブラウザの説明とさらに具体的な使い方です。ソフトを立ち上げると検索のエディットボックスに自動的にフォーカスされ日本語入力もオンになっています。調べたい単語を入力し、そのままエンターをもう一度押せば検索が開始され結果項目のリストビューへ自動的にフォーカスが移動されますから、上下矢印で項目を選びます。本文は項目移動ごとに自動的に更新されていますから、マシンパワーの低いパソコンだと時々「応答なし」とNVDAがしゃべってしまいますけど、これは画像呼び込みも含めて描画が追いついていないだけでありソフトは非常に安定しているので慌てない方がいいです。
 本文へ移動するのはタブキーで、自動的に全文が読み上げられます。検索項目へ戻るにはエスケープを押してから、二度タブキーを押します。本文中の気になるリンクへ飛びたいときにはコントロールキーを押すとおおむね読み上げ箇所にカーソルがありますから、矢印キーかタブキーでリンクを探してエンターするとまた自動的に読み上げがされます。本文をクリップボードへコピーするには、読み上げ途中でコントロールを押してからコントロール+A,コントロール+Cです。
 初期画面でタブキーを押すといくつかのペインが存在していることがわかるのですけど、正直この画面であれこれする必要はなさそうです。初期値では前方一致検索になっていたのでなかなかキーワードがヒットせずシフト+タブで一つペインを戻って検索方法を全文検索に切り替えたなら前バージョンと同じような感じに出来ましたけど、ツールバーの検索目乳を操作した方が確実です。その他も必要なことはツールバーのメニューを使った方が良さそうです。
 少し残念なのは、バージョン3で搭載されていたギャラリーがなくなっていたので音声ファイルもなくなってしまったことです。なかなか病院や教育機関以外では聞くことのできない、貴重な資料だったのですけど・・・。

 ここからはスクリーンリーダー関連の補足になります。まずは後から判明したちょっと反則技なのですけど、Windows10でもXPリーダーのインストールそのものはできてしまうので対応ソフトで時々便利に使うのですけどこの辞書ブラウザも使えてしまいました。検索エディットに単語を入力してエンターすれば結果項目リストへフォーカスが移動しているので、項目名は読み上げできませんけど上下矢印を操作するだけで本文が自動的に読み上げられました。項目名は本文中で確認できます。今は全盲になってしまったので画面の確認ができないのですけど、このことから本文が項目移動で自動更新されていたと判断できました。動作が非常に軽いので、連続して多くの項目を聞く必要があるときには便利でしょう。もっともXPリーダーが今では手に入りませんけど・・・。
 NVDAで問題になるのは読み上げエンジンなのですけど、標準のJ-talkでは医学系の読み上げが全くだめです。オーソドックスですがプロトーカーは医学系用語にもそれなりに強いのでSAPI4から活用して使うと便利でしょう。プロトーカーのアドオンを購入して使うともっと精度は上がるでしょうし、Windows10はSAPI5の音声エンジンをonecoreとして活用できるようになったので辞書登録が容易であり、ここでは割愛しますけどPCトーカーの読み上げ辞書をコンバートして私は読み上げ精度を向上させて活用できています。それでも足りなければテキストエディタにコピーしてください。PCトーカーが起動した状態で辞書ブラウザを立ち上げてしまうと、後からNVDA単独にさせても読み上げがちょっとおかしいので必ずNVDAだけが起動している状態で辞書ブラウザを立ち上げてください。私はクラシックシェルというフリーソフトでスタートメニューを置き換えていますからNVDAでも読み上げができますけど、PCトーカー付属のマイスターとメニューは読み上げされないのでデスクトップにショートカットを配置してそちらから起動させる工夫も必要になります。
 それからNVDA単独で操作しての付属ソフトのことをまとめてしまうと、「LogoVista辞典ランチャ」はほかのLogoviista辞書を所有していないのでこちらは起動不能。「LogoVista辞典アドイン設定」はマイクロソフトオフィス2016がインストールしてあるので、それぞれのチェックボックスが操作可能になっていました(オフィスソフト側が重たくなるのがいやなのでチェックして待て試してはいません)。「LogoVista辞典アップデータ」は少々意味不明な読み上げにはなるものの、タブキーとエンターキーが反応するので310から現時点での最新版316へのアップデートがアップデートボタンとインストールシールドウィザードでできました。「LogoVista電子カタログ」からのインストールも、キーをいろいろ操作していたならリンクが捉えられたので基本的には可能だったのですけど、私がNVDAを普段それほど使っていない不慣れなこともあるでしょうけどインストール中に何カ所かフォーカスがずれてしまう構造になっているのでシリアルキーを入れる箇所のフォーカスがNVDAではうまく合わせられず、PCトーカーでインストールはできるのですから無理して使わなくてもいいかという感想です。

 まとめです。気がついたならバージョン3から12年も経過しており、高額な辞書ですから簡単には買い換えられないものの絵とが一週もしていたなら更新は必要だとテスト欄で確認した時点で自分のものは発注しました。このバージョンは2015年の発売なのですけどアップデータが入手できるので、細かなバージョンアップが受けられますから時々でも活用する人には購入が推奨できます。
 南山堂とLogovistaのサポート窓口には突然のメールでご迷惑だったでしょうが、いい結果が出てこちらもほっとしています。鍼灸師も医療関係者ですから最新の情報に加えて正しい高度な知識が必須であり、デジタル時代の恩恵を受けて本業をもっと頑張らせていただきます。