『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

マスクを外せない日本人、でも外さないと若い年代の体調不良が

前回(追記あり)無責任予言は的中していた?でも、ジャパンミラクルを本当に実現させるには…では、covid-19発生から一年半で日本だけ驚くほど感染が落ち着くまでの振り返りをして、そこから希望的観測が多く入っていましたけどジャパン・ミラクルでパンデミックが乗り越えられるのかという点を書いてみました。
 結果としては感染力がデルタの数倍というオミクロンの世界的大流行に日本も巻き込まれたものの、covid-19が時間経過とともに宿主との折り合いをつけられる段階になってきている感じでコロナウィルス感染そのものでは死亡しないということから、日本を含め世界中で生活様式を元通りにしていこうという動きになっています。ただし、最初のゼロコロナの体験が忘れられない中国だけが上海市の二ヶ月にも渡るロックダウンを行うなど、独り相撲をしている光景が見られてはいますけど。

ここで、この半年間にわかってきた興味深いことを書き残しておきます。2022年7月現在で感染の波を今のところ6波までに分類しているのですが、そのうちゲノム解析から2・3・5波は枝分かれをした日本独自の株だったそうです。特にデルタ株の5波は世界的に犠牲者が多く出たのですけど、東京パラリンピックが開幕した頃から急速に感染者数が減少したなら一ヶ月半でほとんど観測されなくなったという不思議な現象になっていた正体が明らかになりました。
 変異というのは単純に表現すればコピーミスのことであり、人から人へ感染するときに必ずこのコピーミスは発生するのですけど実はコロナは修復遺伝子を持っていたことが判明しました。小さなコピーミスを修復してしまえるのです。ところが修復遺伝子の方にエラーが発生してしまい、いわゆる「ウィルスの自殺」が本当に発生していたそうです。あの驚異的なコロナ感染者の激減は、ワクチンや感染対策の成果ではなく単純にウィルス側のオンゴールだったのでした。2002年のSARS-CoVが8ヶ月後に忽然と地球上から消滅してしまい謎だったのですけど、今回のゲノム解析から自殺をしていたことが証明されました。その点で言えば私の無責任予言も、無責任だから良かったのですけど根拠としていたものは的を外していたことになります、ごめんなさい。

次は、この半年の間の臨床現場からです。現時点でオミクロンのさらなる亜種のBA5が置き換わってきており感染者数がまた増加してきて7波と区別される可能性は出てきているのですけど、オミクロンになってからの重症化率はわずかであり家族全員が順番に感染しても外出制限があるだけで危険性はあまり感じなかったと聞きます。医者からも入院勧告もなければ臨床薬の投与も任意であり、単純に休息していれば回復できる誰もがかかる病気のレベルになったというのが印象です。もちろんオミクロン感染をきっかけに体調を崩して死亡してしまったケースもあったのですが、毎年のインフルエンザからの死亡例と比べて大差はなく冬場の呼吸器病としては同じレベルだと評価するのが妥当でしょう。
後遺症から鍼灸治療を求められたケースも多くあったのではありますが、そのほとんどは真熱になってしまい熱っぽさと倦怠感が続いているというもので、これもインフルエンザの後遺症として毎年遭遇してきたものと大差ありませんでした。違いがあったとすれば精神的ダメージが大きかったことでしょうか?
 慥かに精神的ダメージも加わっていたのは、患者サイドとしては一大事だったかも知れません。「かかってはいけない病気になってしまった」のような日本人独特の罪悪感というのか、自分で追い込んでしまい回復を妨げていると感じました。治療としては特に他の病気と区別することもなく順調に回復してもらえていたのですけど、治療感覚を最初は詰める工夫だけはしていました。それと付け加えるなら、「これだけ日本人は真面目にみんなが感染対策をしているのにそれでもかかってしまうのだから個人に責任はない」と、ウィルスのほうが上手なのであり感染経路は不明だということを強調していたことでしょうか。ワクチンの第一目的は重症化を防ぐことで、発病を防げるのは二次的なことだという話もしました。後は手指のアルコール消毒よりも、うがいを丁寧にしたほうが発病予防には効果が大きいことの説明でした。

 さて、covid-19のパンデミックが発生してから約二年半、そろそろ今後の収束方法について真剣に準備に入る時期ではないかと思います。ゼロコロナというのは絶対にないのですが今までにもコロナウィルスは共存できる状態になっていたのであり、鼻風邪だと定義するのが一番です。ところが政治の道具にもされているcovid-19ですから、医者サイドも「感染症法で2塁相当はもういいだろう」と言い始めているのに、決断する立場の政治家がまだ動こうとしていません。日本のとっている対応はあまりに丁寧すぎるので半年経過した2020年の秋にすでにインフルエンザ同等に引き下げて症状が重たいものだけをピックアップする形式にしておけば、経済の立て直しも早く保健所を筆頭に行政の負担も軽くで済んでいたはずです。元々から偽陽性の出る確率が高いPCR検査そのものを私は快く考えていなかったのですけど、それが上海でのゼロコロナ制作で叩けば叩くほど何処かからホコリが舞い上がってくる状態になることを証明していますよね。重箱の隅をつつけば必ずcovid-19は検出されるのであり、偽陽性という冤罪も作り続けてしまいます。PCRを間違いだとは言いませんけど、もしPCR検査がなかったなら逆に地球規模での被害は小さかったのかも知れません。
 そして一番切実な問題は、マスクを外すこと。日本人以外は行政があまりにしつこく言わないとマスクを付けないのですけど、逆に日本人は自主的にマスクを外そうという雰囲気が全くありません。それまではマスクをきっちり装着するので日本での感染割合は諸外国よりずっと低いのだと専門家という人たちが主張していましたけど、オミクロンでそれはあたっていないと証明されました。マスク会食を一時期強調されていましたけど、「アホも休み休みに言え」ですよね、扇風機で空気を強制循環させておくほうがよほど会食時の予防には効果がありました。それは飛行機や新幹線内での感染が、一度も確認されていないことが証拠になります。逆に隠れてのパーティーでのクラスタが発生していますけど、隠れて開催するため人口密度の高い部屋で空気循環がされていなかったためです。ウィルスの大きさとマスクの繊維の細かさからすればウィルスの侵入を阻止することは原理的に無理なものの、もし感染していたとしたなら他人への感染を防げる可能性は高いということでのマスク着用とは最初から言われていたものの、上海での大規模ロックダウンではマンションの自室から外出することすら厳しく禁じられていたのにマスク着用も厳しく言われたのに、それでも一ヶ月は感染増大に歯止めがかからないのが現実でした。上海でのコロナ減少は人間の生活態度が抑圧したのではなく、単純にウィルスの寿命のサイクルに合致していただけだったのでしょう。
装着していたほうがマシではあるマスクをどうして嫌うかですけど、二年以上もつけっぱなしだったので身体内部にこもってしまった熱が限界だと真剣に感じているからです。covid-19以前だと咳症状も出ていないのにマスクをしている人を見かけると変な感じではあったものの、本人曰く「予防もあるけどマスクをしていると温かいので」と言われていたように、保温効果が二次的にあります。花粉症でもマスクを装着してこられましたが、花粉を吸い込まないことと保温の2つで鼻水が抑制できるのだと考えます。温かいうどんを食べていると急に鼻水が出てきてしまうのは鼻粘膜が直接熱せられて緩んでしまうからなのですけど、マスクでは鼻粘膜を緩めるほど表面は温められないものの内部に熱を閉じ込めていくので、マスクをしていると次第に鼻水の量が少なくできるのでしょう。東洋医学で内熱というのは「陰虚内熱」であり、前述の予防としてマスクをしていた人たちは陽気不足もあったでしょうがむしろ陰気が増えすぎての陰盛で内部が冷えてしまうので、それを補えるからという病理が簡単に成り立ちます。
 けれど外的要因から強制的に内熱状態を作り続けてきたのですから、それも二年以上経過しているので脈状からは限界だと判断しているのです。毎年暑くなる一方の夏なので熱中症が早くも出てきていますが、すぐ過剰反応をしてくる陰虚も徐々に増えてきました。そしてもっと困ったことに、はっきりと症状を出さないのに体調不良が続く「隠れ熱中症」が若い世代に広がりそうなのです。直射日光の下では作業をしていないし冷房も適宜使っているからと、「自分は若いので熱中症にはならない」と頭で否定してしまう傾向が非常に強いのです。
 「脱水症」は単なる水分不足ですから、意識が朦朧としても水分が補給できればすぐ回復できます。「熱中症」は体温がこもってしまった状態なので意識ははっきりするものの、水分を補給しただけでは回復できず西洋医学的には点滴での栄養補充が必要となります。両者の区別は身体が動かなくなったとき、意識が朦朧としてしまうかはっきりしているかなのですけど、緊急時に切り分けていてもあまり意味がないのでとりあえず水分を補給させ安静にさせることです。

鍼灸治療では暑気あたり(夏バテ)と熱中症はどちらも陽気が暴走してしまっているもので、病理としては程度の違いだけです。ただ、その時点で陽気が表面に吹き出して発熱のように感じるのか、すでに表面の陽気が吹き飛んでしまい強烈な倦怠感ばかりを感じているのか、内部の陰気を押し倒してこもってしまっているのかなどはその時点によります。刺絡(瀉血)を臨床に用いている治療家なら、井穴刺絡を中心に適宜行えばドーゼ過多さえなければ陽気そのものを抜いてしまえるのですから得意分野と言えるでしょう。最近の私は時邪の影響が大きすぎて陽気が暴走していると考え、季節の該当する経穴から瀉法を行うことで数分で症状が回復できるようになりました。それまでは標治法を先に行うなどで陽気の制御を優先したり、あるいは陽経から本治法へ入るということで対処してきたのですけど、本治法を二度くらいやらないと抑えきれなかった記憶です。他の治療パターンについては自分はやったことがないのでコメントしないことにしますが、これくらい治療できなければ鍼灸師になった価値はないでしょうね。
 鍼灸院内では「マスクはどうしても必要なとき以外はしないほうがいいです」と指導できるものの、やはりマスクの外せない日本人です。冬にまた全員がマスクをしても季節的にそれはいいのですが、暖かい季節にはもうマスクを外してくれないと体調不良の特に若い年代が増加してしまうのを心配しています。