『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

『精神の海』を泳ぐ

二人で仲良く寝ている

 またプライベートブログ『子供に贈る、視覚障害者お父さんの子育て日記』からの転載になりますが、何度か掲載した時とは違って加筆と修正をしてあります。
 登場人物はお父さんが院長である私、お母さんは副院長である二木優子、長女の愛菜と長男の信成、そしてまだお腹の中にいる赤ちゃんです。

 ここから本文になります。


 この『子供に贈る、視覚障害者お父さんの子育て日記』は実母の他界という悲しい出来事があったのでしばらく休載していましたが、今日はかなり重要な内容を書きます。
 ちょっとばかり難しいですけど、決して難解なものではありません。これはお母さんからのリクエストということでそのような内容にしたのであり、将来に子供たちにも役立つ内容ですから文面がやや硬くなっていてもご勘弁を。

 赤ちゃんも妊娠五ヶ月にいつの間にか突入していて、本来なら安産祈願にも出かけて腹帯をしてお祝いというところなのですけど、今の状況ではお祝いがまだできません。安産祈願については近いうちにおばちゃんに付き添ってもらって出かける予定ではあるのですが、実は赤ちゃんの妊娠経過で今までになかった心配な検査経過があったのです。
 トキソプラズマ感染症というのは農家の人であれば間違いなく感染しているものなので特別な感染症ではなく、人体には通常は何も猩々が鳴く無害なものです。その辺りの土壌にいる寄生虫ですから、土いじりでもしていたなら同居人になるようなものですね。
 問題はトキソプラズマに感染していなかったのに、妊娠初期に感染してしまったケースです。この説明だけでごくまれなケースであり、先にその可能性はほとんどなかったということを報告しておきます。妊娠前に感染していたり安定期後の感染であれば母子感染はなく、前述のように農家の人であればまず感染しているものなので怖がるような寄生虫ではありません。
 それから長男に続いて自宅出産をお願いしている助産師さんからも、トキソプラズマの検査自体をしていない病院の方が多いのだから初期感染だって報告以上に存在しているはずなのに、大きな問題になっていないということはその程度のことである。これだけ順調な妊娠経過になるはずがないのだから、心配の上に心配を重ねるようなことはしない方がいいと後日にアドバイスを受けました。

 それで妊娠初期にトキソプラズマに感染してしまうと胎盤から母子感染が発生し、知的障害にはつながらないものの障害児が産まれるとか成長してから網膜に異常が発生してしまうという症状がでてきます。
 過去の記録を調べてもらうと愛菜の初期検査では数値が現れておらず、信成の時には検査データそのものがなかったということで比較の対症にならなかったのですけど、妊娠初期の血液検査の結果を聞いた時にいきなり「トキソプラズマが陽性だから再検査をしましょう」と詳しい説明なしに言い渡されたものですから、帰宅してからインターネットで調べて愕然となってしまったお母さんなのでありました。

 それで今日は再検査の結果を聞きに出かけることになっていたのですが、今まで頼りにしていたおばあちゃんは既に思い出の中に生きているだけとなってしまいましたし、おじいちゃんは付き添ってくれるようなタイプでないというよりもこれ以上の負担を掛けたくありませんし、おばちゃんや大ばあちゃんにも心配を掛けたくなく、ましてお母さんの実家へ報告しておくと仕事を犠牲にして飛んできてくれたなら申し訳ないということで、お父さんが仕事を抜けるわけには行かないので鍼灸院の助手のお姉さんに付き添ってもらうこととなりました。
 この一週間は忙しさの中で忘れている時間もあったのですけど、昨夜などは緊張しても仕方がないのになかなか眠れなかったお母さんであります。
 助手のお姉さんにマンションまで迎えに来てもらって出かけたようですけど、詳しい状況は聞いていません。けれど十時過ぎには「初期感染の時期に合致していればもっと数値が上昇しているはずなのに変化がないということでまず大丈夫といわれた」との電話がお母さんからあり、数値など聞くまでもなく声のトーンで結果の判断できているお父さんでありました。

 その後に助手のお姉さんが鍼灸院の勤務に入らねばなりませんし、顔を合わせての報告ということでみんなで鍼灸院まで来たのですけど、あいにくベッドが満杯だったので会話はそこそこに退散してもらうのでありました。
 それで今日の写真ですけど、半年後にはここに赤ちゃんも寝ているだろうということで仲良く眠っている愛菜と信成です。


 さてここから、安心をしたなら疲れが出たのかつわりの気持ち悪さなのか午後はほとんど寝ていたので赤ちゃんの無事だったお祝いも兼ねて回転寿司で夕食となったのですけど、その時にお父さんがお母さんへ少々きつい忠告と注文をした言葉を収録しておきます。
 あくまでもお母さんからのリクエストなので、嫌みではありませんからあしからず。

 大切なお腹の中にいる子供のことですから心配をしない親なんていませんし、まして障害を持つかも知れないという検査結果では確実に一時は悪いことをあれこれ考えるでしょう。お父さんだって、表情には出しませんでしたけど鍼灸院では色々と考えもしました。
 けれど、すぐ心は決まりました。ホームページの本当に「知」のある人間とは?でも記録しているように、自分たちの結婚披露パーティーで参加してくれた人たちへ宣言しているのです。命とは平等であり、障害があってもなかっても平等であり、全員で生きていこうと考えられる人が本当に知のある人間ではないのか。だから、どんな子供であっても必ず産んで育てていくのです。
 お父さんからの「どんな結果も受け入れるし心配もしていない」と繰り返し言葉は聞きながらも、やはり不安でもしもの結果の時には一人で運転して帰宅できる自信がないからと助手のお姉さんにも付き添ってもらったのでした。

 かなり長い前置きになりましたが、ここからお寿司を食べながら話した核の部分になります。
 強い気持ちを持つということは、それだけ病気や障害を乗り越える力となるのだから「心配だ」「不安だ」とうろたえるだけでは何も解決にはつながらない。
 お医者さんがあるセミナーで報告していた傾向の話ですが、癌を告知されて延命できたグループの第一位は癌と闘うぞ」と強い気持ちを持っていた人たちであり、癌そのものへ立ち向かった人もいるでしょうし、残された時間の中で勉強をしたり自分が存在した証を形にした人もいたでしょう。
 次は「自分が癌なんかであるものか」と診断は受け入れなかったものの強い気持ちを持っていた人たち。庭仕事が忙しすぎて病気そのものを忘れてしまったり、医療を信じていなかったケースもあるでしょう。
 「癌なんかじゃないはず」と同じように否定したものの不安を抱えた人たちはあまり延命されず、「もうだめだ癌なんだから」と告知だけで気持ちが弱ってしまった人たちは癌細胞が広がるより先に命が途絶えてしまうくらいの急速さで落ち込むとのことです。
 病気や現状を肯定するか否定するかはその人が歩んできた人生の質にも関わっているので少し問題が複雑になるものの、いずれにしても強い気持ちを持っていなければ壁を突破することなどできないという証拠ですね。

 赤ちゃんのことについてもずっとこのような考えがあったのでお父さんは気持ちが揺らがなかったのだと説明しました。
 そして予定では最後の妊娠であり、子供が三人になるということはお姉ちゃんと弟という上下関係だけでなく立体的な関係になってくるのだから、その母親は常に強い気持ちで接して行かねばならないはずと付け加えました。

 琵琶湖といえば小学五年生くらいだったか、「かんぽの宿」の横の水泳場でこれまたおぼれてしまい、、この時は本当にどこにいるのかさえ分からなくなってしまい思わず一生の記憶映画が上映開始になっていました。それでどうやって助かったかですが、完全に上下間隔がなくなっていたので口から空気を履いてできた泡に付いていって水面から顔を出すことができたのです。この時にパニックの恐怖を知りましたし、パニックからの脱出方法を自己学習したのでありました。いやいや小学生ごときが「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長のような沈着冷静な判断をできたはずもなく、溺れた人のドキュメントか何かをテレビで見て覚えていただけです。と
 2007年12月17日の日記 水泳の話でも説明したことがあるのですが、パニックから脱出する最短で確実な方法は「今自分はパニックになっている」と自覚できるように自分へ質問することなのですけど、まだ実践できていませんね。

 「精神という海を修行者は泳ぎ病者はおぼれる」という言葉も説明したことがあるはずなのですけど、自分で精神の海を泳ぎ切っていこうとする気持ちがなければならないのです。
 母親が「不安だ不安だ」という気持ちを抱いていると、確実にそれは胎児へ伝わってしまい抱えなくてもいい身体症状を抱えてしまうかも知れません。

 現在の世界恐慌に匹敵する大不況の波は、サラリーマンだけでなく自営業の人だっていつ何時に経済状況が窮地に追いやられるのか分からないのですから常に恐怖を感じている毎日であり、うねる波の中へ埋没してしまいそうな状況を考えていただければ「精神の海」という表現はイメージしていただけるでしょう。
 「精神の海」を、強い気持ちで泳ぎ切っていきましょう。