『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

池田先生講演会に参加させていただいて、漢方鍼医会は原点へ戻ろう

池田先生講演会に参加させていただいて、漢方鍼医会は原点へ戻ろう

滋賀漢方鍼医会  二木 清文

 去る10月22日、名古屋漢方鍼医会が池田政一先生をお招きしての講演会を開催され、漢方鍼医会の会員へも呼びかけてもらえたので参加させていただきました。現在でこそ学校教育が中医学理論を取り入れているので漢方病理を前提としているものの、日本の鍼灸業界で病理の必要性と解釈を初めて訴えられたのは池田先生だと断言しても過言ではないでしょう。日本伝統鍼灸学会の50周年記念誌を読んでいると30年前の平成の初期に入っているのに、いわゆる経絡治療は六部定位脈診と六十九難の二つの呪縛のようにさえ思える強固な壁を乗り越えようとしてもがいていましたが、ここへ漢方病理の必要性を提唱されたのが池田先生です。ぼちぼち中医学の話題も入りつつはありましたけど、中医学の理論と実技の乖離している状況はその当時からのものであり、日本の鍼灸で咀嚼して発展させていくべきことを訴えられたのでした。
 いわゆる経絡治療でも集団で実技をして脈診や腹診を通して技術体系は構築できていたのですけど、証決定の入り口が呼吸器なら肺経、内臓なら脾経といった小児鍼ならその程度でもいいのですけど大人の治療には説得力が足りませんし、複数の臭素があればどれを優先すべきか関連性はどうなのかが説明できず、研修会ではリーダーの意見が押し通されてしまうという屁理屈の世界がそこそこありました。それでも刺激治療に比べれば浅い鍼で治療効果も高くでてくれて難病にも対処できてはいたので個人レベルでは良かったのかも知れませんけど、とりあえず治療形式を固めるために導入された六十九難と六部定位脈診が逆に壁になって学も術も成長の限界に達していたのでした。そこで「触った・やった・効いた」と揶揄され気味の治療を、自分たちも納得でき患者への説明ができる治療体系を作りたいということで漢方鍼医会が創設されたのは、池田先生の教えがあったからにほかありません。
 漢方鍼医会の発足と同時に池田先生には顧問になっていただき、初期には基礎講座で毎月のように講演に来ていただき、その後も20周年までは年に一度は講演と実技に来ていただいていました。それで気がつけば10年ぶりに「池田節」に触れたことになります。初期の漢方鍼医会で模索に苦しみながらも研修会への参加がとても楽しかった時期を思い出させてもらいました。またcovid-19の影響は大きく鍼灸の行団体というものはどこも弱体化してしまったのですけど、それでも少しずつ人員の入れ替えはあって池田先生の公園と実技を実際に体験したことのない会員が半数ということでしたから、初めての人たちには普段の研修会とは違った実技がとても新鮮に写ったのではないでしょうか?
 covid-19の影響もかなり大きかったですが、近年の漢方鍼医会は池田先生の教えからさらに飛躍をと様々な意見に取り組んできたのですけど、改めて「池田節」に触れて徒労の部分が相当に大きかったと感じたのは私だけではなかったと思います。もちろん新しい知識と技術がマイナスになったのではありませんが、迷っていたのも確かにありました。いや、迷子になっていたでしょう。それを「君の家はここだよ」と教え直してもらったような気がしました。久しぶりに実家や育った学校へ戻ってきて新鮮な気持ちになり、そこで新たな発見をした、そんな気分でした。

 そういう意味では、様々な研修会が参集して日本の鍼灸レベル向上に取り組んでいるので、伝統鍼灸学会への会員登録と学術大会への参加もこの際ですからアナウンスさせてもらいます。他流試合ではありませんけど、自分が所属する研修会ではしなかった発想をしている場面に出会ったり思わぬ解決方法のヒントがあったり、その逆の刺激を漢方鍼医会からも与えられていることもあったりで、経絡を活用する鍼灸治療というものは様々な角度から取り組めるものですから様々な角度からの視点が必要です。今年の広島大会でも刺絡を主力とする実技やブラジルでの取り組みと実技、一般発表でも大学での取り組みや文献研究だけでなく症例を通しての考察と話題豊富であり、久しぶりに私も「瀉法鍼による骨折治療について」の題名で発表をさせてもらっています。本治法テスターというものには疑問を感じる点が多いものの、どうして補法がアルミで瀉法が銅になるのかイオンからすれば逆ではないかと思うのですけど記憶に残ったりと、自分たちの研修会内だけでは得られない経験ばかりです。
 広島大会のアーカイブ配信が間もなく始まりますので、ホームページから申し込めば今からでも閲覧できるようになります。来年は東京開催となります。

 池田先生が漢方鍼医会へも惜しみない力を貸していただいたように、私達も持てる力を鍼灸業界へ注ぎ、患者さんの治療がより良いものへ進化していくようにさらに努力を続けていきましょう。