『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

小児鍼専用ベッドを導入

入り口から見た小児鍼専用ベッド

 今回は純粋に治療室のネタです。当院ではホームページに治療ポイントあれこれ ビデオでも解説 小児鍼(しょうにしん)というページを掲載しているくらいですから、自分の子どもが産まれる以前から小児鍼には力を入れてきました。
 その原点は研究発表「小児鍼の運用について」で詳述していますけど、学生時代の重複障害児の治療を手がけたところからでした。それと助手時代には半年も経過しない間から小児鍼のほとんどを任されていたので、この勉強も非常に大きな財産となっています。

 小児鍼の考え方や施術についてはビデオ付きで解説していますからそちらへ譲るとして、小児鍼専用ベッドを導入したことでの変化について今回は報告したいと思います。
 2009年の新型インフルエンザ大流行は鍼灸院とも無関係ではなく、消毒薬が手に入らないとかマスク着用が厳格になるとかの運用面だけでなく、来院患者の動向にも変化がありました。保育園や小学校の臨時閉鎖に伴い親が仕事を休まざるを得ないので予約の変更があったり、特に中学生や高校生の患者層は外出が制限されたためか減少しました。大人に関しては普段から鍼灸院へ来院されている方には偏見はなくむしろ病院の混雑を避ける傾向でした。しかし、影響が一番大きかったのは小児鍼でした。
 今まではまとめて来院されるケースというものがほとんどなく、団体様といっても双子か兄弟一緒にというくらいでしたから大人の予約の隙間で十分に対処できていました。ところが、新型インフルエンザを警戒してご近所で自動車をまとめて来院されるケースや回数がどうしても増えるので子どもの来院が連続したりと、時にはベッドが埋まった直後に来院されたので待合室で対処しなければならないこともありました。オーバーブッキング状態ですから大人には予約時間のズレが発生してきますし、子どもを連れてきたお母さんは準備と片づけが慌ただしく気の毒でしたし、ベッドの掃除と受付をしなければならない助手にもストレスの溜まることが多くなりました。
 冬場には「小児鍼のベッドがあったならなぁ」と思いついたことはあったのですけど、オーバーブッキングはその場限りですから思いついただけで導入までは考えませんでした。しかし、新型インフルエンザ以降の状況は私が一番ストレスです。

 そこで色々と考え始めたのですけど、駐車場は今でも不足しているのにベッドの増床はかなり難しい問題です。けれど発想の転換をしてみれば、小児鍼もできるベッドではなく小児鍼専用ベッドならできるのではないかと、まずは頭の中で設計図を描き始めました。小児鍼専用ならカーテンは不要ですし、片方が壁にくっついていても何も問題はありません。そうなれば通路に設置することも可能であり、幸いにも通路は大きめに取ってあります。
 年末の大掃除の時にガスファンヒーターの設置場所が変更できることを確認したなら、あとは運用体系のシミュレーションと実際のベッドのデザインと高さが問題として残るだけでした。

 それで年明けを待って、イトウメディカルショールームに助手の勉強も兼ねてみんなで出かけて、実物を見てみました。この時点で設置形態から移動のできる簡易ベッドにすることは決めていたのですけど、高さ調節がどの程度で着るものなのかは不明でした。高さ調節に関しては、木製ならねじでできるものの迅速には行えません。金属製のものもボタンとバネの組み合わせですから木製よりは素早くても迅速にはできるものではなく、耐久性にも影響するのでショールームの商品を比べて高さ調節は諦めました。
 問題は、想像していた以上にどれも幅が広いことです。聞けば移動ベッドはスポーツ関連で使われることが多く、、スポーツ選手の大きな身体には大きな幅が必要だということでした。それで購入したものは幅63cmの、ベニア板の天板がなくハンモック式のふわふわしたクッションで一番軽い折りたたみベッドとなりました。このベッドでは按摩や手技療法は行えませんけど、鍼灸治療だけなら大丈夫ですし、増して小児鍼専用ならふわふわした感じが子どもには嬉しいものです。私の子どもも連れて行っていましたから乗せてみると、トランポリン代わりにはね回って遊んでいました。

 写真は待合室から通路に設置した小児鍼専用ベッドです。高さは一番低くしてありますが、電動ベッドの一番低い状態よりは高くなります。デザインはシーツを同じにすることで、かなり調和しているのではと自負しています。シーツはニットのものですからフリーサイズであり、これは重宝ですね。
 ただ、頭の中で設計図を描いていただけなので実物が到着したならエラーもありました。ガスファンヒーターは予定通り移動させたのですけど、ゴミ箱の位置が全く計算に入っていませんでした。これは今の床では大丈夫なのですけど、当時はガスファンヒーターを床に直接おいたのでは床面が熱せられて膨れあがるため下駄のような土台に乗せるようにさせていたので、ここに一緒に乗せることで解決できました。まぁ強気で導入したベッドですから見落としもあるだろうと思っていましたけど、建物関係は模型で確かめておかないとやはりダメですね。

 さて運用を開始してみると、大人の予約時間をずらさないこととお母さんの準備と片づけを慌てさせないことはもちろん解消しました。それからスタッフ全員のストレスも解消しています。
 副産物として、今までおむつ交換を待合室の椅子で行ってもらっていたものが、シーツをめくることで広いベッドでゆとりを持って行ってもらえるようになりました。それだけでなく全体の回転率がよくなりましたから逆に駐車場の混雑が緩和されており、推奨できることではありませんけど小児鍼の方には路上駐車で対処してもらえたりもできています。

 やはり来院される側も混雑していない時間帯をなるべく選んでもらっていたようで、より気楽に治療が受けられるようになったとのことです。これはサービスの一面として、もっと早くに対処すべきだったと反省でした。小児鍼が連続してもお互いが友達になってもらえるようになりましたし、カーテンがない分だけ大人の治療にも全て声が聞こえることは予想外に小児鍼へ興味を持ってもらえているようです。
 子どもが通院するようになるとおじいちゃんおばあちゃんが来院するようになって、その親戚も来院するようになってと小児鍼は営業的にもとてもプラスです。鍼灸院の評価という点でも大きなアドバンテージがありますし、その評価は全体の来院しやすさにもつながってくることでしょう。最近は孫と遠く離れて暮らしていたり孫のないお年寄りも多くなったので軽く「お孫さんは?」と話題を振りにくくなりましたけど、それでもこの国の未来を作っていくのは子どもですから小児の治療ができることは医療として重責を担っています。

 今回は必要に迫られての行動ではありましたけど、余裕がなくても設置スペースが確保できるのであれば小児鍼専用ベッドを増設することを、世間の鍼灸院には強く推奨します。