『にき鍼灸院』院長ブログ

不定期ですが、辛口に主に鍼灸関連の話題を投稿しています。視覚障害者の院長だからこその意見もあります。

場合によってはマスコミを活用しながらも、鍼灸の普及に務めたい

 この『にき鍼灸院』院長ブログを開始して約一年となり、昨年夏には第15回漢方鍼医会夏期学術研修会滋賀大会を無事に乗り切ることができ、またホームページでは掲載が困難な話題についても文章発表を続けられて、おかげさまで一年を経過することができました。
 年末には実母の他界という悲しい出来事もあり、これについては鍼灸院の経理にも関わってもらっていたので仕事上に大きな影響がまだまだこれから発生してくるのですが、生きている人間を相手にする鍼灸であり人間と人間との関わり合いから発展する鍼灸術なのですから、実母の暖かさと優しさは忘れることなく恩返しのためにも人類へ貢献できる鍼灸を今年も考えていきたいと思います。

 それで月並みではありますが、今年の抱負と目標について記述したいと思いますし、インターネット上で発表するということは努力目標にとどまらず実現へ向けて動き出すという宣言でもあります。
 その目標とは、マスコミベースも場合によっては活用しながら鍼灸というものの真の姿を世間一般に公開し秘録普及させること、しかも私のことですからベースは脉診流の経絡治療であり、研修会に常に参加して切磋琢磨をする鍼灸業界へと再編することまで視野に入れてのものです。もちろんほとんどが漢方鍼医会への所属となれば文句なしなのですけど、鍼灸術発展のためにはある程度の広がりも大切なことであり一つの団体で独占というのもまた腐敗の始まりとなりますから、経絡治療の団体がいくつかになるというのが最終目標でしょうか。

 鍼灸の発達ということについて、私は第15回夏期研の基調講義で次のようなフレーズを喋っています。
 まだ農耕を始めていなかった時代には山野を駆けめぐって狩猟をしていたのであり、時には毒草に触れたり毒蛇に噛まれるなどで大変な負傷をしたことでしょう。命からがら戻ってきたその姿を見て何とかしてあげたいと思うのが隣人愛であり、まずはその傷口へ手を当てたことでしょうから治療をすることを「手当てをする」と表現します。時には傷口から毒を吸い出してあげていた人の方が毒を飲み込んでしまうという不幸な事故もあったことでしょうし、これを防ぐために動物の角をくりぬいてストローのようにして毒を吸い出す吸角療法が考案されたことは想像に難くありません。
 ある時には患部に手が触れられないので別の部位を押さえていると、不思議なことに病状が回復したことからツボ(経穴)が発見され、経穴の発見が積み重なって経絡というつながりも発見されてきたというのも想像に難くないでしょう。つまり、経絡や経穴というものは生命誕生と同時に存在していたのですけど、それに気付いて活用する方法を物理的な肉体構造にとらわれず発展させてきたというのが東洋医学の素晴らしい点だと言えます。
 そしてもう一つ重要な点は、経絡や経穴を効率的に運用するために考え出された道具が鍼灸であり、鍼灸を使うために後から経絡という概念を組み立てたのではないということです。実際に出土してきた本には現在のような十二経絡がまだ成立していないものもあり、鍼とお灸が併記されていないものもあります。現代では鍼灸とワンセットで表現していますけど、実は鍼とお灸もバラバラに発展してきた治療手段だったのかも知れないのです。

 少し歴史的な考察をしてみればこれくらいのことは学生レベルでも当然に判明してくることであり、経絡を効率的に運用するための道具が鍼灸なのですから当然ながら経絡の運用をまず頭に入れて診察から診断・治療とならねばならないのです。
 西洋医学をベースに鍼灸の効能を研究することを無駄とはいいませんけど、西洋医学に訴える実験を得ようとするならなおのことまず経絡中心での施術をしてその結果を捉えねばならないはずなのですけど、現代の鍼灸業界の主流は本末転倒していることに気付くべきです。コンクリートを下側からうち破ってきた「根性大根」というやつが話題になりましたけど、コンクリートにいきなり大根を植えても育ちませんよね。そこへ中医学を無視できない状態となっており、一体どのような方向へ鍼灸が向かうべきなのかが全く提示されていない状況であります。

 ここまでが基調講義の一部なのですけど、さらにもう一つの問題はこの話の分かる人だけが研修会に参加していることであり、本当にこのような内容を読んだり聞いたりして理解して欲しい人へ届いていないということです。
 どんな職業にも勉強している人としていない人がいますけど、勉強をしている人は次々に知識も吸収して自己革新を繰り返す努力をしているのですが、勉強をしていない人はある地点で進化が止まっておりそれを自分で気付いていないのですから自己革新などあり得ないのです。むしろ他人に迷惑を掛けていることすら気付いていないケースもあり、医療という世界であるなら勉強をする気持ちがなくなったなら退くべきなのですけど現実はその人たちも生計を営まねばならないので施術を続けている。
 また研修会に参加している人も研究が進むうちに思想が多様化し、一つの研修会で枠が治まり切らなくなると細胞分裂のように分かれてしまう現象を止めることができていません。マンパワー不足を補うために莫大なエネルギーを注いで成功させた夏期研なのですけど、大きな行事が終了すれば往々にして発生することなのでしょうけど逆に会員数が減少してしまったという事実は今回の文章を書くきっかけともなっています。

 それで「マスコミベースも時には活用しながら鍼灸というものを普及させたい」というところへつながってくるのですけど、マスコミに乗ってブレイクするような希望は誰でもそうでしょうがかなり以前からあったものです。
 けれど医療の世界でのブームは困ります。まして現代のテレビはかなり虚偽の情報も流していますから、納豆やバナナのようなダイエットブームが巻き起こっては非難の嵐に吹き返されてまるで津波に襲われてその後には被害しか残らなかった状況に陥ってはなりません。ですから、テレビだけは絶対に活用しないというのが第一条件になります。
 それではどのような形で脉診流の経絡治療を・漢方鍼医会の治療を普及させたいかですけど、鍼灸師のベースが形作られる学生たちに積極的にアピールすること、ズバリを書けば講師として教壇に立ちたいというビジョンが浮かんできました。

 こちらが勝手に「講師になりたい」と思っていてもすぐ実現することではありませんが、まずは今までと同じように専門家向けの情報公開を続けていこうと思います。それからしばらく積極的な投稿から遠ざかっていたのですけど、今年は雑誌への記事執筆も再開したいと思います。また助手を一般経済の情勢から二人から一人に減らしてもいいかと一時期は考えていたのですけど、積極的に採用することで実績にもつなげたいと思っています。そうするとマスコミからの注目が少しありそうな予感です。

 経絡・経穴鍼灸の発達経緯から研修会の話やマスコミの話などまとまりがなくなってしまいましたけど、不況と対症療法の限界でも記したように対処療法から根本治療へと変わらねばならないのですから、さらに積極的に前進する時だと決意を新たにしています。